女優淡路恵子(76)の四男で、15日に自殺した元俳優萬屋吉之亮さん(36=本名・井田哲史)が18日、都内の斎場で荼毘(だび)に付された。関係者十数人がひっそりと集まったが、淡路は来月出演する舞台のけいこを理由に出席しなかった。会見した淡路の長男で俳優の島英津夫(49)は「母はまだ受け止められない状態」と話した。

 島によると、吉之亮さんは15日に東京・新宿区の自宅マンションで自殺した。ドアノブにビニールのひもをつなぎ、正座状態で体重をかけて首をつっていた。遺書はなかった。16日夜、吉之亮さんを訪ねた知人が遺体を発見するまで約20時間が経過しており、連絡を受けた淡路は島に、悲しみのあまり「(遺体を)見れない」と話したという。

 吉之亮さんは故萬屋錦之介さんと淡路の間に生まれた。俳優として活動した時期もあるが、次第に仕事がなくなり、アルコール依存症に陥った。最近はそううつ病も患っていた。酒を飲んでは暴れる吉之亮さんを更生させようと長年闘った淡路だが、04年、酒代を盗むため淡路のマンションに侵入したところを警察に通報。会見で「真人間になるまで会うつもりはない」と涙ながらに語った。以降、1度も会っていなかった。

 とはいえ、1週間前には吉之亮さんの仕事が決まり、来月の淡路の舞台も見る予定だった。島は「母はチケットを用意して、哲史の『S』のイニシャルを書いていた。仕事も母との再会もこれからだったのになぜ」。戒名が間に合わず「井田哲史之霊」と書かれた位牌(いはい)に手を合わせた。

 [2010年6月19日8時6分

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