歌舞伎俳優中村獅童(41)の母小川陽子(おがわ・ようこ)さんが17日、心不全のため東京・杉並区の自宅で亡くなった。73歳。この日朝、自宅の風呂場で陽子さんが浴槽につかったまま亡くなっているのを訪れた関係者が発見した。獅童は数年前から湘南のマンションに住んでおり、陽子さんは1人暮らしだった。

 獅童は悲しみを胸に秘め東京・歌舞伎座の舞台に立った。病院で母の遺体に対面した後、歌舞伎座に入り夜の部「仮名手本忠臣蔵」で斧定九郎と小林平八郎を演じた。歌舞伎座を通じて「本当に突然のことであり、頭が真っ白な状態です。気持ちを整理いたし、後日改めまして、お話をさせていただきたいと思っております」とコメントしたが、終演後に取材に応じた。

 目に涙をためた獅童は「気が動転しておりまして…。25日の千秋楽まで無事に務めるのが私の仕事。先月、明治座で初めて座頭をやって、母も喜んでいた。あらためてごあいさつしたいと思います」と何度も声を詰まらせた。車に乗り込む時にファンから「獅童、頑張れ」の声が飛んだ。午後10時ごろ自宅着。報道陣に「ご心配をかけてすいません」とあいさつした後、自宅に入った。遺体は今日18日朝に自宅に戻るという。

 陽子さんは中村獅童事務所の社長も務めた。08年に亡くなった父三喜雄さんが歌舞伎俳優を廃業したため、7歳で歌舞伎界に入った獅童の面倒はすべて陽子さんが見た。10月に母と初めてトークショーを行った獅童は「今は会えば、けんかばっかり。でも、非常階段で重い鏡台を担ぎながら上がる母の姿は今も目に焼きついている」と感謝した。

 30代まで同居したが、05年に女優竹内結子との結婚を機に別居し、離婚後も別々の生活が続いた。陽子さんは獅童の出演する劇場に頻繁に顔を出し、今月も歌舞伎座を度々訪れた。獅童は元モデル女性と同居しているが、陽子さんも再婚に賛成だったという。