【ロンドン(英国)7日(日本時間8日)=村上幸将】世界中に夢と感動を与え続けた「ハリー・ポッター」シリーズの“卒業式”は感動の涙であふれた。15日に世界同時公開されるシリーズ最終作の「ハリー・ポッターと死の秘宝

 PART2」(デイビッド・イェーツ監督)のワールドプレミアが英ロンドンで行われた。主演の英俳優ダニエル・ラドクリフ(21)ら主要キャストは、会場のトラファルガー広場に世界中から集まった1万4000人のファンを前に、自分たちの人生を大きく変えた作品との出会いと、この10年に感謝した。

 炎が燃える真っ赤なステージにラドクリフ、ハーマイオニー役のエマ・ワトソン(21)、ロン役のルパート・グリント(22)の3人組が並んだ。原作者のJ・K・ローリング(45)、制作したデビッド・ヘイマン(49)ら“親”が囲む中、ラドクリフが“卒業のあいさつ”を始めた。

 ラドクリフ

 ハリー・ポッターは映画というよりも、僕の10年間を費やした人生そのもの。映画は終わるけれど経験、物語は心の中に持ち、続いていくもの。ジョー(ローリング)ありがとう、僕にこの役をくれて。すばらしくて、すごく変な10年間だった。でも僕は、こういう経験が出来てとてもラッキーでした。

 ワトソンも「人生の半分をかけた、この作品は誇り」と涙をポロポロこぼした。いつも笑顔のグリントも「人生でベストの10年。ありがとうという言葉じゃ足りない」と泣いて3人で抱き合った。笑顔のラドクリフも、右手で目をぬぐった。

 “すごく変”というラドクリフの言葉が、この10年をすべて表現していた。生活保護受給者でシングルマザーのローリングが執筆した「ハリー・ポッターと賢者の石」の映画化権を、ヘイマンが出版前に獲得。97年6月の出版後に原作が大ヒットし、00年8月のオーディションには数千人が集まった。合格したとき、ラドクリフとグリントは11歳、ワトソンは10歳だった。

 映画も全世界でヒットし一気にスターになったが、重圧も大きかったのだろう。ラドクリフは09年公開の「謎のプリンス」撮影時にアルコールに依存し、昨年8月にようやく酒を断った。米ニューヨーク・ブロードウェーで上演中の主演ミュージカル「努力しないで出世する方法」の合間をぬい、この日午前に帰国も、許された滞在時間は36時間。普通の21歳ではありえないハードスケジュールだが、人生が激変した10年間をともにし、すべてを分かり合う2人と見つめ合うラドクリフの笑みは輝いていた。「ハリー・ポッターは永遠に不滅です」というローリングの言葉が最高の“卒業証書”となった。