スティーブン・スピルバーグ監督(66)率いる映画製作会社ドリームワークスが、是枝裕和監督(51)の映画「そして父になる」のリメーク権を獲得したことが28日、分かった。この日都内で行われた同映画の公開初日舞台あいさつで発表された。同社による日本映画のリメークは、02年「ザ・リング」以来。是枝監督は本紙の取材に対し、次回作以降もスピルバーグ監督が興味を示していることを明かした。舞台あいさつでは主演した福山雅治(44)も感激していた。

 劇場に是枝監督の喜びの声が響いた。「ロスにいます。急きょドリームワークスとのリメーク契約が成立しました」。福山が「宇宙からです」と冗談を言うほど雑音が入り、通話は何度も途切れたが、拍手に包まれた。

 福山は、その4時間前に撮られたという是枝監督とスピルバーグ監督が握手する写真を見て「是枝さんが選んだキャスト、映画をスピルバーグ監督が気に入って米国でリメークされることを大変うれしく光栄に思います」と喜んだ。

 契約は26日に決まり、是枝監督は翌27日にロサンゼルスに飛び、同日(日本時間28日)にスピルバーグ監督と対面。同映画が審査員賞を受賞したカンヌ映画祭で審査委員長を務めた同監督から「カンヌで見てボロボロ泣いた。4カ月たっているのに、まだ同じハイレベルの感動が残っている。本当に素晴らしい」と、絶賛された。是枝監督は「もっと条件のいいところもありましたが、カンヌのいい流れもありスピルバーグ監督を選んだ」とリメーク権をめぐる争奪戦が展開していたことを明かした。

 詳細は今後詰めるが、スピルバーグ監督から「作っている時には、もちろん現場に来てください」と誘われたという。さらに「『次はどんなのやるの』と聞かれて話をした。ものによって脚本を読んでいただく流れになりました」と次回作以降、スピルバーグ監督が何らかの形で関わってくる可能性も広がってきた。

 ドリームワークスのリメーク権獲得のニュースが米国でも伝わる中、同監督は28日(日本時間29日)にニューヨーク映画祭の上映会に出席する。

 この日、新たにスペインのサン・セバスチャン映画祭パールズ部門で観客賞を受賞したという一報も飛び込んだ。是枝監督は常々「映画の多様性にどう貢献できるか考えるとリメークの前にオリジナルがどれだけ広く届けられるかが大事」と語ってきた。この日、本紙の電話取材に「オリジナルにも注目が集まって、いい形が続けばいい。いい弾みになると思います」と語った。【村上幸将】

 ◆ドリームワークス

 スピルバーグ監督、ディズニー元副社長のジェフリー・カッツェンバーグ氏、レコード界の大立者デビッド・ゲフィン氏が94年10月12日に共同で創立した映画製作会社。98年「プライベート・ライアン」などヒット作を出すが、負債を抱え、05年にパラマウント映画に買収され、08年に再び独立。その後も経営難が報じられるが、12年にスピルバーグ監督作品「リンカーン」が米アカデミー主演男優賞と美術賞を獲得。