たとえば小学生の頃、校長先生の話が難しかったり長かったりして、かったるいなぁと思ったことはありませんか? 逆に、わかりやすくて短い話をしてくれる校長先生が人気だったりしますよね。ではどうしたら人気のある先生の話し方ができるでしょうか。

トーク編16「トークの意識改革」

 【前回までのあらすじ】「書き言葉」になっている台本や原稿は、「話し言葉」に書き換えると伝わりやすい。「話し言葉」を磨くには普段のしゃべりから気にするべし、でした。

そばと日本酒のイベント「大江戸和宴」で司会を担当。一緒に登壇した、2016ミス日本酒・田中沙百合さんと日本酒店の皆さん。左端が五戸です(2016年6月)
そばと日本酒のイベント「大江戸和宴」で司会を担当。一緒に登壇した、2016ミス日本酒・田中沙百合さんと日本酒店の皆さん。左端が五戸です(2016年6月)

空気が読めないと言われる瞬間

 決して、難しい話をする校長先生は良くないという話ではないです。ただ、小学校なら小学生に、中学校なら中学生に、わかりやすくタメになる話が求められる、ということは言えると思います。(もちろん、わかっていてあえて難しい話にしている先生もいます)

 こういう現象は「校長先生のお話」だけでなく、結婚式の乾杯の発声で全員が起立している状態なのに、長々とどこかで聞いたことのある夫婦がうまくいく方法を語ったり、ゲストのトークショーなのに司会者がとうとうと自分の話をする、なんてときも当てはまります。いわゆる“空気が読めない”と言われる瞬間です。

聞き手を想像すべし

 それなら空気を読めば良い、ということになりますが、この表現は抽象的で曖昧なので、私はあまり好きではありません。一番簡単なのは、「聞き手を想像する」という方法です。

 「こう言ったらどう思われるかな」「この説明でみんなに伝わるかな」など、先生なら生徒が、結婚式なら新郎新婦と出席者が、イベントなら目の前のお客さんが、どう受け取るかを想像するんです。相手にとってわかりやすい言葉なのか、適度な長さなのか、楽しんでもらえているのか、考えるんです。

青木愛さんのトークショーで司会を担当した五戸です(2016年7月、千葉・アリオ市原で)
青木愛さんのトークショーで司会を担当した五戸です(2016年7月、千葉・アリオ市原で)

私も自己満やっちゃってました…

 それは至極当たり前なことではあります。しかし、私ははじめ人前で話すとき、「良く見られたい」「頭が良さそうに思われたい」「よく知っていると思われたい」「専門的だと思われたい」。そういう自己満足がありました。主役が自分だったんです。トークの主役は話し手ではなく聞き手であると、今はそう思います。

 絵や歌や小説は、自分が伝えたいことを自分の好きなように表現するのが良いと思います。それが芸術だから。でも、トークやスピーチは芸術ではない…受け手のことを一番に考えたほうがずっとうまくいくと思います。(時にあえてそうしない場合もあります)

トーク内容も言葉の選び方も変わる

 私が教えているアイドルの子たちもそうです。見てくれるお客さんのためにしゃべる。それは、初めて来るお客さんがおいてけぼりにならないようなトークをすることだったり、ちょっと笑えるエピソードトークをすることだったりします。

 相手を想像するのが難しかったら、友だちや家族の前でしゃべってみて意見を聞くのも良いと思いますし、話の長い人がいてかったるいなぁと思うことがあったら、人のふり見て我がふり直せ、です。ちょっとした意識改革で、トークの内容も言葉の選び方も、だいぶ変わると思います。(次回はトーク編17「欧米のスピーチトレーニング」です)

本日のごのへの・ご・ろ・く

トークの主役は話し手ではなく聞き手である