ウオッカ武豊2センチ差の戴冠/天皇賞
<天皇賞>◇2日=東京◇G1◇芝2000メートル◇3歳上◇出走17頭
外が差していた-。最強牝馬2頭による今世紀最高のデッドヒートはわずか2センチ差で武豊騎手(39)のウオッカ(牝4、栗東・角居)に軍配が上がり、ダイワスカーレットに雪辱した。写真判定は15分に及んだ。勝ちタイム1分57秒2は、従来の記録を0秒8も塗り替える驚異的なレコード。史上に残る名勝負に余韻はさめやらなかった。
武豊は信じるだけだった。ただ祈るしかなかった。15分に及んだ写真判定の間、ウオッカとダイワスカーレットは2頭で引き運動をしながら待った。勝者と敗者を区別するのが惜しい名勝負。1分57秒2のレコードが表示された電光掲示板の最上位に14の数字がともると、スタンドのどよめきは地鳴りとなった。これで宿敵との対決は2勝3敗。
ヒーローインタビューに登場した武は胸をなでおろした。「写真判定中は生きた心地がしなかった」。ようやく実感したように言葉がついて出た。
「うれしいです。本当にどちらか分からなかった。最後に(検量室前に)帰って来たら、1着の場所にダイワスカーレットがいたのでちょっとショックでしたけどね(笑い)。最後までよく走ってくれた。たとえ負けたとしても素晴らしいレースだったと思う」。
向正面で馬を止める時、安藤勝騎手と言葉を交わした。「どうですかね」と武。「いや分からないな」と安藤勝。ウオッカもスカーレットもウイニングランをしなかった。武は「勝ったような気もしたけど」と半信半疑のまま2着の場所へ納まった。
空前のデッドヒートを「同着でも良かったんですけど」と表現しライバルもたたえた。牝馬ワンツーは58年セルローズ-ミスオンワード以来、実に50年ぶり。表彰式ではファンと万歳三唱した。「名牝というよりも名馬ですよ。僕自身も今年は大きなレースで結果を出せていないし苦しかった。ウオッカに助けられた」。
ウオッカ自身のコンディションもパーフェクトだった。大歓声で迎えられた馬場入場。テンションが高まり一気に走りだす他馬を横目に悠々と披露会をした。落ち着きがあるからこそできるパフォーマンス。品格あふれる馬体を外ラチ沿いで誇示した。「歓声に慣れさせようと思って」と武。名馬はスキップするかのように走りだした。
好位で脚をため、自分でレースをつくるというチャレンジにウオッカは完ぺきな答えを出した。直線に入り右手前に替え、内で食い下がるディープスカイを競り落とした。ラスト200メートルでもう1度左手前に替えて完全燃焼。ゴール板では首を投げ出しての激闘に、12万人が熱狂した。
来年は再び海外遠征を見据えている。この後はジャパンC。歴代牝馬2位となる4つ目のG1を加えたスーパーウーマンは、どこまでも可能性を広げる。【高橋悟史】
[2008年11月3日8時56分 紙面から]
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