岡田今治が、初陣を白星で飾った。元日本代表監督の岡田武史氏(58)がオーナーを務めるFC今治が、四国リーグ開幕戦でR・VELHO(香川)に快勝。初戦の緊張で前半は硬さが見られたが、後半に突き放し、スタンドで見守った岡田オーナーもホッとした表情を浮かべた。10年後にJ1で優勝を争い、日本代表を5人輩出するという目標へ向けた第1歩を踏み出した。

 勝利が決まった瞬間、険しい表情がようやく和らいだ。オーナーとしての初陣を白星で飾った岡田氏は「監督よりイライラするね。俺、オーナーは向いてないかも(笑い)。今日は胃が痛くなったよ。監督時代はそんなことはなかったよ…」と苦笑いを浮かべた。

 監督時代のように厳しい眼光で試合を見守った。「監督の時より険しかったかもね」。巧みなパス回しで試合を支配しながら得点できず、後半3分のMF高橋の豪快な30メートルミドル弾を皮切りに加点したが「勝ったのは良かったけど力を出し切れていない」と話した。

 オーナー就任から半年。デロイト・トーマツ・コンサルティング、三菱商事、芸能事務所LDH…。総額1億5000万円(推定)のスポンサーを集めた。「今の俺は営業マンだよ」。あえてメディアの露出も増やし、自らが広告塔の役割を買って出た。

 「監督の時はダメなら辞めればよかった。オーナーは社員、選手を食べさせていかないといけない。相当の責任を感じる」。現場に指示を出したくなる衝動を極力抑え、チーム経営というオーナー業を優先。この日もハーフタイムに少しばかり助言しただけだった。

 10年後のJ1優勝争い、日本代表5人を輩出などの大目標に向けたスタートを切った。ただ「感慨はない。現場でやる以上に難しいのが、経営を安定させること。簡単ではない(戦いの)1歩が始まった感じだね」。オーナー岡田武史の視線は既に将来を見据えていた。【菅家大輔】

 ◆FC今治 愛媛県今治市を拠点とするアマチュアのサッカークラブ。1976年(昭51)に「大西サッカークラブ」として設立。数度の名称変更を経て09~11年は愛媛FCの下部組織「愛媛FCしまなみ」として活動。12年から運営組織の移管に伴い「FC今治」に。12年天皇杯2回戦でJ1広島を撃破。四国リーグを12~13年と連覇も、昨季は3位。元広島監督の木村孝洋氏(58)が指揮。ホームグラウンドは桜井海浜ふれあい広場サッカー場。

 ◆四国リーグ 正式名称は四国社会人リーグ。1977年(昭52)に創設。8チームによる1部構成で、FC今治のほか、アイゴッソ高知、高知UトラスターFC、多度津FC(香川)、R.VELHO(香川)、llamas高知FC、南クラブ(香川)、中村クラブ(高知)が所属。昨季は高知Uトラスターが優勝した。最多優勝はテイジン(愛媛)の10回。

 ◆JFL昇格の条件 地域リーグ所属チームがJFLに昇格するためには、全国地域リーグ決勝大会(出場12チーム)で上位2~3位(JFL所属チームのJ3昇格数で変動)に入らなければならない。全国地域リーグ決勝大会に出場するためには、各地域リーグで優勝するか、全国社会人選手権で原則3位以内の成績を残す必要がある。また、国内リーグのカテゴリーで地域リーグは、J1、J2、J3、JFLに続く「5部相当」。