ブンデスリーガで勝負! 日本代表FW武藤嘉紀(22=東京)が、正式オファーを受けているイングランドの名門チェルシー入りを断ったことが11日、分かった。チェルシー関係者の話によると、東京から連絡を受けたという。武藤はドイツで勝負したい気持ちが強く、ブンデスリーガに一本化。現在正式オファーを受けているマインツなどを候補に、今夏の移籍先を決める。

 不確かな理想よりも、今は現実を選んだ。武藤はチェルシーからの正式オファーを断ったことが、チェルシー関係者らの話で明らかになった。この日までに東京からチェルシー側に連絡が入ったという。3月上旬にオファーを受け、4月上旬に表面化。サッカー界の枠を超えて、注目をされたビッグオファーだった。プロ2年目を迎えたばかりの武藤は、夢のような話に冷静な決断を下した。

 チェルシーは、名将モウリーニョ監督のもとで今季、5年ぶり5度目のプレミアリーグ制覇を果たしたばかりのビッグクラブ。そのネームバリューは世界中にとどろく。豊富な資金力で各国代表クラスを抱える状況の中、すぐに出場機会を得ることは困難だと、武藤自身が判断した。移籍したとしても、欧州主要リーグを除くオランダ、ベルギーなどのクラブへの期限付き移籍が既定路線。そうやって他国リーグに保有している選手が、すでに20人を超えている現実を考慮した。

 東京幹部によると「ドイツで勝負したい」と話しているという。かねて「試合に出られることを最優先に考えたい」と言っており、日本人選手が多く活躍しているブンデスリーガに移籍先を一本化した。岡崎を筆頭にストライカーが成功しているドイツでは、日本人への信頼も厚い。現時点で正式オファーを受けているのはマインツのみで、継続してクラブ間交渉を行っている。さらに、打診を受けているドイツクラブは複数あり、オファーへと発展する可能性は十分ある。今後は、マインツを候補にしながら移籍先を決断していくことになる。

 しかし、サッカーの母国でのプレーを諦めたわけではない。同幹部は「将来的にプレミアに行きたいようだ」と、ブンデスからステップアップし、プレミアでのプレーを夢に掲げているという。わずか1年でJ1レベルを脱し、代表に定着。今日12日から始まる国内組合宿にも当然のように選ばれている。ハリルホジッチ監督も気に掛ける武藤の進路。夢を現実とする日を信じて、今は地に足を着け着実に海を渡る。

 ◆武藤嘉紀(むとう・よしのり)1992年(平4)7月15日、東京・世田谷区生まれ。松丘小時代はバディSCに所属。中学から東京U-15深川でプレーしユース昇格。慶応高卒業時にトップ昇格の選択肢がある中で慶大進学。14年にサッカー部を退部して東京とプロ契約。昨季は33試合13得点、今季は11試合8得点。代表ではデビュー2戦目のベネズエラ戦(14年9月)でゴール。国際Aマッチ11試合1得点。179センチ、72キロ。血液型A。

<武藤の移籍問題経緯>

 ▽3月上旬 東京がメールでチェルシーから正式オファーを受ける。

 ▽4月8日 オファー表面化。「光栄ですが冷静に決断したい」。

 ▽同12日 表面化直後のアウェー湘南戦で決勝点。「歩む道をゆっくり決めたいけど、どこに行けば成長できるのか。先を見据える上で自分に合ったチームで、出場して成長できるところを考えていきたい」。

 ▽同18日 広島戦で先制点を決めるも今季初黒星。得点したら負けない不敗神話が公式戦15戦(10勝5分け)連続で途絶える。

 ▽同下旬 マインツから正式オファー。国内で面談し評価を受ける。クラブ間交渉を開始。

 ▽5月2日 川崎Fとの多摩川クラシコで通算140点を決めた大久保のカズダンスに「ホームでああいうことをされると、悔しさも倍になる」と勝ち越し点を決める。

 ▽同6日 アウェー仙台戦で2得点。「今、サッカーを一生懸命やっているのは、海外移籍するためじゃない。東京で優勝したい気持ちが強いから」。

 ▽同10日 鹿島戦で不発。移籍先を「決めることに焦りはない」。