バルバリッチサッカーのコンセプトは「スピードアップ」だ。J2札幌の新指揮官に就任したバルバリッチ新監督(52)が今週中にもチームに合流する。選手たちに新たに植え付けるサッカーは速さのある攻撃になりそうだ。同監督が愛媛在籍時に指導を受けたMF石井らの証言を基に、チームにどういう変化がもたらされるのかを探った。

 札幌が監督交代で、新たに目指していくスタイルが見えてきた。10年から3シーズン、バルバリッチ監督に指導を受けたMF石井は「奪ったら素早くゴール前に運べと、よく言われていた」と証言した。しっかりボールを支配することが大前提で、チャンスとなればゴール前に圧倒的な人数をかけ、得点を狙う。そのためにチームの走力や持久力も、同時に求めていくのがバルバリッチ流だ。

 さらに石井は「練習から厳しく言われたのはイージーなミスをなくせということ。さらにゴール前には血の気を出して入っていけ、と。点を取るためのメンタルな部分を強調して指導を受けた」と言う。横パスが多く、速攻が少ない現在の攻撃を変えるには最適の人材。評論家時代からバルバリッチ監督の試合を見てきた野々村社長は「ゆっくりではない。攻撃に速さをつけられる指導者」と説明した。東欧仕込みの気迫とスピードが、チームを変革することになりそうだ。

 システムは、状況に応じて変幻自在に動かしてきた。あるサッカー関係者は「相手や戦術によって、いろいろ使い分けるのが特長。あまり固定はしない」と言った。愛媛時代は4-4-2、4-3-3、3-4-2-1など、DFやFWの人数にこだわりは少なく、ショートカウンターを狙う際は4-4-2、しっかり守備から入る際は3-4-2-1など、使い分けた。ボランチだけは、ほぼダブルボランチで固定し、それ以外は自在に組み替えながら勝てる布陣を構成した。

 三上GMは「個は育ってきた。J1昇格を狙うには、ここで勝ちにこだわった人材を考えた。勝利への執念が強いのがバルバリッチ氏」と言う。つなぎの部分はロジカルに、フィニッシュの部分はメンタルに訴える新体制が、13位からの逆転J1昇格のカギを握る。【永野高輔】