<ロシアリーグ:CSKAモスクワ2-0アラニヤ>◇16日◇モスクワ

 代表帰りの本田が2発!

 CSKAモスクワのMF本田圭佑(26)が、全2ゴールを挙げた。ホームのアラニア戦にトップ下でフル出場。後半4分に右へパスを出し、ゴール正面で再びボールを受けると左足で冷静に決めた。同40分にも左足ダイレクトでダメ押し弾。今季初の2得点に、独特の言い回しで「ケチャップが出た」とぼそり。チームも2-0で5連勝。W杯に向けた試金石となる10月のフランス、ブラジルとの2連戦へ。貪欲にゴールを奪う意識を取り戻した。

 忘れかけていた「本能」を、取り戻した。点を取る-。本田の思いは、ピッチ上で表現された。0-0の後半4分。中央をドリブルで仕掛けると、右に流れたFWムサへ。ペナルティーエリア付近で、折り返しのパスを受けるとワントラップして、冷静に左足で先制弾を決めた。さらに同40分。ゴール正面で、左のムサからの高速クロスを、ドンピシャのタイミングで押し込んだ。今季初の2発。本拠地は発煙筒がたかれ「本田劇場」に沸いた。

 試合後の取材通路では、うつむき加減でニコリともせずに通り過ぎようとした。昨年5月25日クリリヤ・ソビエトフ戦以来の1試合2発にも満足できないのか-。立ち止まることなく、無言で過ぎようとした時、思い出したかのように、ひと言だけつぶやいた。

 「ケチャップが出た」-

 11日のW杯アジア最終予選イラク戦で、再三の決定機を外した。試合直後、日本代表ザッケローニ監督に呼び止められ「もっとゴールを取れるはずだ」と厳しく指摘された。その際、本田は報道陣にこう言った。

 「『もっと取れ』と言ってくれる人が少ないので監督は貴重な存在。僕に対して満足しているそぶりは見せないので、いい傾向と思う。どこかの名ストライカーが言っていたけど、ゴールはケチャップだと。出ない時は出ないけれど、出る時はドバドバ出る。ロシアに戻って質を高める」

 09-10年シーズンにRマドリードのFWイグアインが絶不調に陥った際、当時の同僚のFWファンニステルロイから助言された「ゴールはケチャップ」という言葉-。本田の脳裏には、その言葉が強烈にある。6月の最終予選3連戦は3戦4発と爆発しながら、9月の代表戦は6日UAE、11日イラク戦と不発。そしてザッケローニ監督の指摘に奮起し、リーグ再開初戦で2発と結果を出した。

 だが日本のエースである以上、好不調の波のある「ケチャップ」ではいけない。W杯本戦でケチャップの口が詰まってしまったら、どうするのか。常に結果を出し続けなければ、真のエースにはなれない。この日の試合終盤、ハットトリックを願う仲間から、ボールが集まった。それだけ代表でも、所属クラブでも信頼を得ているのは確かだろう。13日にロシアに出発する前には「常に(何かに)飢えているという状況がサッカーだけでなく、いろんな業種に必要なんじゃないか」と言い残して旅立った。

 常に飢え続ける-。その先にゴールがある。10月には日本代表としてフランス、ブラジルと世界の強豪との試合が控える。世界の頂点を狙う14年W杯ブラジル大会まで。本田は、常にドバドバと出続けるケチャップでいなければいけない。