世界反ドーピング機関(WADA)の第三者委員会は9日、ジュネーブで開いた記者会見でロシアの陸上界で組織的なドーピングが横行していると認定し、ロシア陸連の資格を停止し、同国選手の大会出場を禁じる処分を国際陸連に勧告した。反ドーピング態勢が改善されなければ来年のリオデジャネイロ五輪に出場できない可能性が出てきた。

 2012年ロンドン五輪女子800メートル金メダルのマリヤ・サビノワを含む5選手と4人のコーチ、1人の医師は永久資格停止処分が適当とした。モスクワの検査所の認定取り消しと責任者の永久追放も求めた。

 WADAは昨年12月にロシア陸上界の疑惑がドイツの公共放送で報じられた問題を受け、パウンド元委員長を責任者とする第三者委を設置。疑惑の解明を目指してきた。

 発表された調査報告書によると、ロシアは1400を超える検体を廃棄するなどしており、パウンド氏は「ロシアは組織的なドーピングを把握していたと思う」との見解を示した。ドーピング違反を隠す目的の賄賂の実態については、適切な調査ができる国際刑事警察機構(ICPO)に証拠を手渡したとしている。

 国際陸連のコー会長は「クリーンな選手を守り、競技への信頼を回復するためなら何でもする」との声明を発表し、ロシア陸連への制裁処分の検討を開始する緊急指示を出した。

 ロシアのムトコ・スポーツ相は地元メディアに「証拠に乏しい。ロシアは何をやっても悪く見られる。新たな内容は一つもない」との認識を示して反論した。英BBC放送によると、同国陸連は「どんな処分も国際陸連が会議で話し合うべきだ。WADAに資格停止を下す権利はなく、弁明する機会が必要だ」と指摘した。