16年リオデジャネイロ五輪代表高橋英輝(えいき、24=富士通)が1時間18分18秒で3連覇を果たし、8月の世界選手権(ロンドン)代表を決めた。1時間20分12秒の派遣設定記録を約2分上回り、今大会日本人1位の条件を満たした。五輪では42位に終わり、ロンドンで雪辱を期す。

 高橋は勝負に徹した。10キロ地点から9・5キロ続いた29歳の藤沢との2人旅。先輩の背後からラスト500メートルでギアを上げ、一気に引き離した。一昨年の初優勝は「日本一になりたい」、昨年の2連覇は「気持ちが落ち着いていた」。今回は「世界で結果を出さないと」。3連覇にも喜びはほとんどなかった。

 自らを内弁慶と認める。日本選手権を制すようになっても、15年世界選手権は47位。昨年のリオ五輪も42位と惨敗した。周囲の選手からは冗談めかして「国内最強」と言われるが「褒め言葉じゃない」。頭の中は国際大会でのリベンジ一点に向く。

 リオ五輪直前には突然、練習用、試合用シューズの選択にも頭を悩ました。競歩を担当する今村文男五輪強化コーチ(50)は「焦るから、歩きやすい、歩きにくいで悩む。自滅というかね」。足かせは過度の不安だった。五輪後は例年3試合程度の実戦を6試合に倍増。海外のレースにも足を運び「外の環境で歩くことが大事」と、今春も海を渡っての武者修行を志す。

 この日は上位5人が派遣設定記録を突破するなど競歩界は黄金時代に入っている。富士通の先輩で世界記録保持者の鈴木雄介(29)は股関節痛が長引き、五輪に続いて世界選手権も断念。高橋の覚悟は決まっている。「絶対に入賞はしたい。代表の中心になる自覚はある」。日本のエースは今度こそ「国内最強」の肩書に別れを告げる。【松本航】

 ◆高橋英輝(たかはし・えいき)1992年(平4)11月19日、岩手・花巻市生まれ。花巻北高で陸上を始めて2年から競歩。岩手大を経て15年富士通入社。同12月の長崎陸協競歩大会では1万メートルで38分1秒49の日本記録を樹立。好物はオムライスと焼き肉。175センチ、58キロ。