軽やかなリズムを刻んだ。日本歴代2位の20秒11の自己記録を持つ男子200メートルの飯塚翔太(27=ミズノ)が追い風0・8メートルの条件下、20秒34で優勝した。今季最高を0秒20更新し、2年ぶり3度目の頂点に立った。予選前日の22日に携帯電話にメトロノームのアプリをダウンロード。好調時の体の使い方のリズムを染み込ませた。ジャカルタ・アジア大会(8月)の代表にも内定した。

 タッタッタッタッ。心地よいリズムでスパイクの足音を響かせ、飯塚は先頭でフィニッシュラインを越えた。コーナーを3番手で抜けると、直線で楽に伸びた。世界選手権男子400メートルリレー銅メダルメンバーの桐生、藤光らとの戦いを制し「高いレベルのメンバーの中だと頑張れる。ライバルに感謝したい」と笑顔。前回覇者サニブラウンが不在とはいえ、しっかりと王者の座を奪い返した。

 チッチッチッチッ。予選前日の22日。メンタル面サポートを受けるスタッフの助言を受け、携帯電話にメトロノームのアプリをダウンロードした。好調時の足の運び、腕の振りなどのリズムを体に染み込ませるためだ。音は毎分240~250回で刻まれる。決勝の朝もベッドに寝転がって、5分ほど聞いた。「接地時間を長くするイメージで、音のリズムを取る。心地いいタイミングだと自分の力を発揮できる」と言う。急な発想でもあったが、柔軟に受け入れた。その包容力も400メートルリレー代表の精神的支柱たるゆえんだ。

 ワーワーワーワー。200メートルでも会場を満席にしたい思いがある。100メートル決勝の前日23日は観客2万658人だったが、この日は1万772人。「少なかった」と残念がってから「活躍して、人が来てもらえるようにしたい」。オリンピック(五輪)や世界選手権のメダルはいろんな人の手に触れられ、傷だらけ。それでも陸上の魅力を少しでも知ってもらいたいから「勲章です」と意気に感じる男。目指す200メートル19秒台は世界でも達成したのは69人。100メートル9秒台は118人だ。大偉業を成し遂げ、200メートルの存在価値を高めたい。【上田悠太】