昨年のロンドン世界陸上金メダリストが12人エントリーし、そのうち男子の1500メートルと3000メートル障害、女子では800メートルと棒高跳びの4種目でメダリスト3人が激突する。男子走り高跳びでは戸辺直人(26=つくばツインピークス)が2メートル33の日本記録更新を、男子110メートル障害ではセルゲイ・シュベンコフ(27=ロシア/個人参加)が12秒91のヨーロッパ記録更新を狙う。

 戸辺の特徴は海外の試合に強いこと。

 2メートル30以上は合計8試合と日本選手では断トツの数字だが、そのうち5試合が海外の大会なのである。戸辺も含めて過去6人の日本選手が2メートル30台をマークしているが、海外で跳んでいるのは戸辺1人しかいない。

 今年は4月、5月に国内で1試合ずつ2メートル30を跳び、6月にポーランドで2メートル30を、7月11日にはイタリアで2メートル32の日本歴代2位タイに成功し、日本記録に1センチと迫った。

 テクニックの引き出しの多さが戸辺の強さを支えている。4年前のヨーロッパ遠征中に助走歩数を9歩から7歩に変更した。競技場のレイアウトによっては9歩助走をする距離がとれないためだ(戸辺は補助助走数歩をつけるので距離が長くなるタイプ)。

 今季は踏み切りでつぶれない筋力がつき、助走歩数を9歩に戻しスピードを上げた。だが11日のイタリア大会では6歩で跳んだという。2020年東京オリンピックまでに自身に最適の技術を獲得するため、技術変更にためらいなく取り組んできた戸辺だからできたことだ。

 モナコ大会は4年前に9歩助走で2メートル30を跳んだスタジアム。4年間の進歩を示す絶好の舞台で、マフド・エディン・ガザル(31=シリア。自己記録2メートル36)、王宇(26=中国。自己記録2メートル33)ら8月のアジア大会で強敵となる2人とも対決する。

 記録的な特徴が多い戸辺だが、「勝負に集中することで高さを意識しないでバーに向かうことができる」と話している。モナコでも外国勢との戦いに夢中になった戸辺が、気づいたら日本記録より高いバーを跳んでいた、という展開が期待できる。

 ◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する単日、または2日間開催では最高カテゴリーの競技会シリーズ。2010年に発足し、一昨年までは年間総合ポイントで各種目のツアーチャンピオンを決定していた。昨年からシステムが変更され、ファイナル大会出場者を決めるクオリファイリング大会として12大会を実施し、16種目ずつを行うファイナル2大会の優勝者がダイヤモンドリーグ優勝者となるチャンピオンシップ形式になった。各クオリファイリング大会の種目別賞金は3万ドル(1位1万ドル~8位1000ドル)で、各種目は年間4~6大会で実施される。各大会のポイント(1位8点~8位1点)合計上位8人(種目によっては12人)がファイナル大会に進出。ファイナル大会の種目別賞金は10万ドル(1位5万ドル~8位2000ドル)で、年間優勝者には賞金5万ドルとダイヤモンド入りトロフィーが贈呈されるのに加え、来年の世界陸上への出場権が得られる。出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝で行われるため、緊張感あるレースがスピーディーに続く。また、オリンピックや世界陸上のように1種目3人という国毎の出場人数制限がないため、ジャマイカ、アメリカ勢がそろう短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目など、五輪&世界陸上よりレベルが高くなるケースもある。