女子3000メートル障害でベアトリス・チェプコエチ(27=ケニア)が8分44秒32の驚異的な世界新で優勝。

 女子400メートルではショーネー・ミラー・ウイボ(24=バハマ)が48秒97のダイヤモンドリーグ新、2位のサルワ・エイド・ナセル(20=バーレーン)が49秒08のアジア新をマークした。男子200メートルのノア・ライルズ(21=米国)の19秒65など、7種目で今季世界最高が誕生する大盛況の大会となった。

 チェプコエチはペースメーカーが外れた1000メートルでトップに立つと、後続との差をどんどん広げていった。2000メートルは5分49秒81で通過。8分52秒78の世界記録更新を確信したチェプコエチは、最後の障害を越えると徐々に笑みを浮かべ、最後は両手を挙げながらフィニッシュした。

「世界記録よりかなり速いペースでしたけど、レース中も自分に力強さを感じられたので不安はありませんでした。8分50秒はたぶん切ることができる。そう思って走っていましたが、8分44秒が夢のような記録とは思っていません。今日の記録も縮められると確信しています。次のターゲットは8分40秒を切ることです」

 女子3000メートル障害は五輪種目に採用されたのが2008年から。歴史の浅い種目でハードリングの稚拙な選手も多かった。特にアフリカ(出身)選手は走力でカバーして歴代上位記録を出す傾向があった。

 それに比べチェプコエチは障害を越えるときの上下動が少ない。5000メートルも14分39秒33と日本記録を上回る走力を持つ。障害の前でストライドを小さく刻むケースが何度か見られたので、そこを改善できれば記録更新は難しくない。

 女子400メートル2選手のタイムも衝撃的だった。

 優勝したミラー・ウイボの48秒97は世界歴代10位ではあるが、この種目では2009年以来9年ぶりの48秒台だった。2位のナセルは自身が6月に出した49秒55のアジア記録を大幅に更新した。

 前半で大きくリードしたミラー・ウイボは「ナセルが良いレースをして、後半で競り合ってくれたから48秒台を出すことができた」と、ライバルに感謝の言葉を述べた。

「現在は前半の200メートルを速く走るスタイルですが、今後は全体的なペース配分も見直していきたいとコーチと話しています」

 世界記録の47秒60とはまだ1秒以上の開きがあるが、驚異的な世界記録が量産された1980年代のタイムなので更新は難しい。ミラー・ウイボやナセルが目標としているのは48秒70の21世紀最高記録だろう。

 男子走り高跳びはダニル・リセンコ(ロシア/個人参加)が2メートル40の今季世界最高タイで優勝。2位の王宇(26=中国)に10センチの大差をつけた。

 戸辺直人(26=つくばツインピークス)は2メートル27で4位。期待された日本記録(2メートル33)は更新できなかったが、昨年の世界陸上銅メダルのマフド・エディン・ガザル(31=シリア)ら、2メートル30台後半の記録を持つ選手たちと同じ高さを跳んだ。特徴である国際試合での勝負強さはしっかりと発揮した。

 

 ◆今季の女子3000メートル障害

 前世界記録保持者でリオ五輪金メダリストのルス・ジェベト(21=バーレーン)は、1月のクロスカントリー大会を最後に試合に出場していない。昨年の世界陸上金メダリストのエマ・コバーン(27=米国)は9分ヒト桁で3回走り、ダイヤモンドリーグでも2~4位と安定しているが優勝がない。

 ダイヤモンドリーグは4戦が終了。2015年北京世界陸上金メダリストのハイビン・ジェプケモイ(26=ケニア)が5月のローマ、6月のオスロと2連勝したが、6月末のパリ、そしモナコと8分台を連発したチェプコエチが2連勝中だ。今季8分台はチェプコエチ1人だけである。

 ダイヤモンドリーグ累計ポイントではパリ、モナコでも連続3位のジェプケモイが、チェプコエチを8点リードしている。