【5月後半の陸上競技展望】

 トラック&フィールドの選手にとってこの時期の大会は、ロンドン五輪最終選考競技会である日本選手権(6月8~10日)前の最後の試合。本番さながらに調子を上げてくる選手、調整途中で出てくる選手とわかれるが、どの選手も日本選手権への重要なステップと位置づけて出場する。

 東日本実業団に有力選手が多くエントリーしている。

 男子100メートルと200メートルには高平慎士(27=富士通)ら五輪標準記録突破3選手が出場する。2003年世界陸上200メートル銅メダリストの末続慎吾(31=ミズノ)が、4年ぶりに国内主要試合を走ることも注目点だ。

 男女の5000メートル競歩には、すでにロンドン五輪代表に決定している森岡紘一朗(27=富士通)、鈴木雄介(24=同)、山崎勇喜(28=自衛隊体育学校)、大利久美(26=富士通)の4人がエントリーした。5000メートルは五輪実施種目ではないが、競歩のオールスター戦的な大会になる。

 男子棒高跳びの鈴木崇文(24=ミズノ)、走り幅跳びの菅井洋平(26=同)、女子100メートルと200メートルの高橋萌木子(23=富士通)らは、五輪標準記録突破のチャンスを生かしたい。

 また、男子400メートルに800メートル日本記録保持者の横田真人(24=富士通)が、1500メートルに昨年の日本選手権10000メートル優勝者の佐藤悠基(25=日清食品グループ)がエントリーしている。日本選手権に向けて短い距離で調整をするのが狙いだ。

 関東学生対校はすでに第1週が終了。男子やり投げのディーン元気(20=早大3年)が自身3度目の80メートルスローを見せ、順調ぶりをアピールした。第2週は箱根駅伝を沸かせた村澤明伸(21=東海大4年)や大迫傑(20=早大3年)らが男子5000メートルに出場する。今季100メートルで10秒08とブレイクした山縣亮太(19=慶大2年)は200メートルにエントリーしているが、右脚大腿の故障のため第1週の100メートル準決勝を欠場。200メートルへの出場も微妙な状況だ。

 海外遠征も行われる。テグ国際には男子800メートルの横田と女子走り幅跳びの岡山沙英子(30=ボスアル)が出場する。横田は自身の日本記録(1分46秒13)を更新すれば、五輪B標準(1分46秒30)も同時に突破することになる。ゴールデングランプリ川崎で外国勢を抑えて優勝した岡山は、五輪B標準の6メートル65が目標だ。

 同大会の男子4×400メートルリレーには日本が出場。五輪出場権は2大会の合計タイムの上位16国に与えられる。日本は3月2日時点で16番目とボーダーライン。ゴールデングランプリ川崎は3分4秒15。優勝したが強風のためタイムを少ししか縮められなかった。テグでは3分1秒台で順位を大きく上げたい。

 国際陸連主催のダイヤモンドリーグとワールドチャレンジ・ミーティングスも世界各地で開催される。

 上海ミーティングは地元上海出身の劉翔(28=中国)が一番の注目選手。110メートルハードル前世界記録保持者で、アキレス腱の手術を経て復帰。今月のゴールデングランプリ川崎では13秒09で快勝した。12秒台での優勝が期待されている。

 そしてウサイン・ボルト(25=ジャマイカ)がゴールデンスパイク、ゴールデンガラと100メートルを連戦する。今月5日にジャマイカ国際で9秒82の今季世界最高をマーク。9秒7台も期待できそうだ。【5月後半の主な陸上競技大会】5月16日:テグ国際=ワールドチャレンジ・ミーティングス第5戦(韓国・テグ)5月19日:上海ミーティング=ダイヤモンドリーグ第2戦(中国・上海)5月19、20日:東日本実業団(埼玉・熊谷)5月19、20日:関東学生対校第2週(東京・国立競技場)5月25日:ゴールデンスパイク=ワールドチャレンジ・ミーティングス第7戦(チェコ・オストラヴァ)5月31日:ゴールデンガラ=ダイヤモンドリーグ第3戦(イタリア・ローマ)