<実業団女子駅伝西日本大会>◇28日◇福岡県宗像市役所発着6区間42・195キロ「昔の名前みたいに“爆走”しましたね」

 ワコールの永山忠幸監督が、愛弟子の福士加代子(30=ワコール)の快走に目を細めた。3区(10.2キロ)で32分11秒の区間新をマーク。12位から一気にトップへ躍り出てチームを優勝に導いた。

 中継時にトップまで30秒差と聞き「行くだけ行ってみよう」と飛ばした。区間記録保持者の野口みずき(34=シスメックス)も福士の前にいた1人。2秒前に中継所を出た野口にすぐに追い抜き並走したが、間もなく引き離した。マラソン金メダリストも「福士さんが強かったですね。参りました」と脱帽した。

 先頭の天満屋まで実際には53秒差があったが、この日の福士には関係なかった。「前との差が詰まってきたら、どんどん乗ってきました」。6.3キロ付近で天満屋を抜いてトップに躍り出た。福士本人も「今日は奇跡です。自分でもよく動いてビックリしました」と、驚きを隠せない。

 かつては“笑顔の爆走娘”とあだ名をつけられた。5000メートル日本記録のスピードで、駅伝でも区間賞を取り続けた。20歳台後半になると、笑顔は変わらないが敗れるレースも増えてきた。昨年の西日本大会は欠場し、全日本大会は3区で区間3位。大阪国際女子マラソンへの練習過程で「重たい状態」(福士)だった。

 その大阪で9位と敗れてマラソンでのロンドン五輪出場に失敗。トラックで3回連続代表となって1万メートルで10位と健闘したが、11月4日のニューヨークでマラソンに再チャレンジをする。1週間前のレース出場は初めての試みだった。

 永山監督は「トレーニングを変えて、4回目のマラソンで一番スピード練習をしていません。それでも今回が一番スピードが出ている」と手応えを話す。

 2時間23分59秒の派遣設定記録を切れば来年のモスクワ世界陸上の代表有力候補となるが、ニューヨークはアップダウンが多い難コース。「野口さんから(コース終盤の)セントラルパークがきついと教えてもらった」と、覚悟はできている。

 出場するのは2時間18分58秒(世界歴代5位)を持つティキ・ゲラナ(25=エチオピア)や、昨年の世界陸上優勝者のエドナ・キプラガト(32=ケニア)らの強豪たち。福士の目標はタイムや順位ではなく、世界にどこまで通じるのかを試すこと。「先頭集団でどこまでついて行けるか、自分のマラソンがどこまでできるかやってみたい」

 ロンドン五輪で入賞できなかった日本女子マラソンの再起を、“爆走娘”に戻った福士が担う。