<6月後半の陸上競技展望>

 トラック&フィールドはシーズン前半のヤマ場である日本選手権(6月7~9日)が終了し、モスクワ世界陸上の代表が決定した。ここからは8月の本番に向けて、各選手がいかに調整していくか。その過程で出場する試合でどんなパフォーマンスを見せるかが注目点になる。

 ビッグなニュースが飛び込んできたのは世界陸上代表が発表された2日後の12日。高校生代表となった桐生祥秀(17=洛南高)のダイヤモンドリーグ・バーミンガム大会(6月30日)100メートルへの出場が発表された。

 4月に10秒01のジュニア世界記録に並ぶタイム(※)を出した桐生は、海外からも注目されていた。今回の出場は大会主催からの招聘(しょうへい)により決まったという。2010年に発足したダイヤモンドリーグだが、日本人高校生が出場するのは初めて。100メートルでは日本人2人目の出場という快挙である。※風速計が旧式のものだったためジュニア世界記録としては公認されないが、ジュニア日本記録としては公認される。

 現時点で出場が確定しているのは今季9秒96で走っているカーマー・ベイリー・コール(21=ジャマイカ)と、2003年世界陸上金メダリストのキム・コリンズ(37=セントキッツアンドネービス)。コリンズは今季10秒04がベストで、9秒台最年長記録を狙っている選手だ。

 地元英国からは、昨年の世界ジュニア選手権優勝者のアダム・ジェミリ(19)が出場してくる可能性がある。ジェミリのベストは10秒05で桐生よりも下だが、ロンドン五輪では準決勝で10秒06で走るなど国際大会に強い。桐生としては競り勝ちたい相手だ。

 今週末のインターハイ近畿予選から、7月30日開幕のインターハイ全国大会まで1カ月半近く間隔が生じる。日本選手権の疲れもさほどないことから、このタイミングで国際試合を入れる決断をしたと思われる。異例の海外進出を果たすワンダーボーイの動向から目が離せない。

 日本学生個人選手権には、男子棒高跳び世界陸上代表の山本聖途(21=中京大)がエントリーした。5月に5メートル74の日本歴代2位、学生記録をマークしたばかりで、日本選手権も5メートル70で制した。風などの条件に恵まれれば5メートル83の日本記録に挑戦するだろう。

 全米選手権で一番の注目選手は110メートル障害のアリエス・メリット(27=米国)だ。昨年の今大会で自身初の12秒台を出して優勝すると、その後は12秒台を続けてロンドン五輪で金メダルを獲得。9月には12秒80と世界記録を0・07秒も更新した。

 今季は5月のダイヤモンドリーグ上海大会で脚を負傷。どこまで回復しているかが注目される。

 男子100メートルのタイソン・ゲイ(30=米国)とジャスティン・ガトリン(31=米国)の対決も白熱しそうだ。2007年大阪世界陸上金メダリストのゲイは、9秒86の今季世界最高を5月にマーク。2008年以降では最高の状態といえるだろう。2004年アテネ五輪金メダルのガトリンは、6月6日のダイヤモンドリーグ・ローマ大会でウサイン・ボルト(26=ジャマイカ)を0・01秒差で破った。条件が良ければ9秒7台での決着を期待できる。【6月後半の主な陸上競技大会】6月20~23日:全米選手権(アイオワ州デモイン)6月21~23日:日本学生個人選手権(Shonan

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 スタジアム平塚)6月30日:ダイヤモンドリーグ・バーミンガム大会(英国バーミンガム)