<ダイヤモンドリーグ第13戦・チューリッヒ大会展望>

 陸上のダイヤモンドリーグ第13戦のヴェルトクラッセが29日、スイスのチューリッヒで行われる。男子100メートルのウサイン・ボルト(27=ジャマイカ)や女子200メートルのシェリー・アン・フレイザー・プライス(26=ジャマイカ)ら、モスクワ世界陸上金メダリスト18人が出場する豪華な顔ぶれ。ダイヤモンドリーグ自体は来月6日のブリュッセル大会が最後だが、約半数の17種目は今大会が最終戦となっている。4万ドルの賞金とダイヤモンドトロフィーを獲得する年間チャンピオンが決定する。

 注目はボルトとフレイザー・プライスの、世界陸上で男女の短距離3冠を達成したジャマイカコンビ。100メートルに出場するボルトは、モスクワでは雨の中で9秒77のシーズン自己最高記録で快勝した。条件が良ければ9秒6台は出せそうだ。ドーピング違反が発覚したタイソン・ゲイ(31=米国)が6月に出した9秒75の今季世界最高は、最低でも上回っておきたい。

 ライバルはモスクワ銀メダルのジャスティン・ガトリン(31=米国)。5月のローマ大会ではガトリンが勝っているが、世界陸上を見る限りボルト優位と見て間違いない。だが、年間ポイント争いでは12点のガトリンが独走中で、ボルトが優勝しても追いつかない。

 フレイザー・プライスの出場は200メートル。年間ポイント争いでは1点差の2位だが、優勝すれば逆転できるので可能性は高い。自身が6月に走った22秒13が今季世界最高。自己新となる21秒台が記録的な目標だろう。

 女子5000メートルではモスクワ世界陸上の金メダリスト同士が対決する。5000メートル優勝者のメセレット・デファー(29=エチオピア)と1万メートルのティルネッシュ・ディババ(28=エチオピア)。ディババが現世界記録保持者で、デファーが前世界記録保持者である。2004年のアテネ五輪からのライバルで、昨年のロンドン五輪5000メートルではデファーが優勝してディババが3位。

 ダイヤモンドリーグ得点でもデファーが10点、ディババが8点で、最終戦で勝った方が年間優勝者になる。今季初対決が、最高のシチュエーションで実現する。

 モスクワ世界陸上のメダリスト3人が出場する男子走り高跳びも注目の対決だ。ボーダン・ボンダレンコ(23=ウクライナ)が2メートル41の大会新、世界歴代3位タイの大ジャンプで優勝し、銀メダルのムタス・エッサ・バルシム(21=カタール)と銅メダルのデレク・ドロウイン(23=カナダ)の2人が2メートル38と、世界陸上最高レベルの空中戦を展開した。

 ボンダレンコは7月のダイヤモンドリーグ・ローザンヌ大会に続く2メートル41だったが、一足早く6月1日に2メートル40の大台をクリアしたのがバルシム。ドロウインは「バルシムの2メートル40が起爆剤となった」と話している。

 2メートル40前後で優勝を決めた選手が、2メートル45の世界記録にバーを上げて挑戦するだろう。◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する最高カテゴリーの競技会シリーズ。今季はドーハ大会を皮切りに9月のブリュッセル大会まで全14戦が開催される。各大会の種目別優勝賞金は1万ドル(2位6000ドル~8位1000ドル)。各大会のポイント合計で争われる年間優勝者には4万ドルとダイヤモンド入りトロフィーが贈呈される。出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝。緊張感あるレースが次々に行われる。また、オリンピックや世界陸上のように1国3人という出場人数の制限がない。ジャマイカ、アメリカ勢が揃う短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目などは、オリンピックや世界陸上よりも激しい戦いになる。