<ソウル国際マラソン>◇17日◇ソウル市光化門前スタート、チャムシル・オリンピック競技場ゴールの42・195キロ

 2時間7分台を目指した川内優輝(26=埼玉県庁)が、目標には届かなかったものの2月3日の別大毎日マラソンでマークした自己ベストを1秒更新する、2時間8分14秒で4位と健闘した。十数人のアフリカ勢に囲まれる中、先頭集団を快走。30キロ過ぎのペースアップに対応できなかったが、代表選出が確実な今夏世界陸上モスクワ大会に向け、賞金(1万5000ドル=約143万円)以上に実りあるレースになった。フランクリン・チェプコニー(28=ケニア)が2時間6分59秒で優勝した。

 絶望的な数字が川内の目に飛び込む。競技場に入った時、電光掲示は2時間7分20秒。ゴールまでのトラック4分の3周で7分台は無理だ。それでも必死で脚を押し出す。フィニッシュ後には、最近では珍しく倒れ込んだ。全力疾走は、わずか1秒ながら自己ベストの結果で報われた。それでも収まりはつかない。「あ~切れたな~、8分台。もったいない!

 30キロ過ぎのあそこがな…」。腹の底から速射砲の言葉をはいた。

 ほぼ平たんなコースに緩やかな風、6度前後の気温も問題ない。専属のケニア人ペースメーカー(PM)も2時間7分30秒の設定通りに機能した。さらにアフリカ選手用のPMが、5キロを15分5秒前後と遅れたのも、川内には好都合だった。30キロ通過の1時間30分39秒は、目標達成を予感させた。

 落とし穴はその直後。30キロ過ぎの給水でアフリカ勢3人に離される。1度は戻ったが、2度目のスパートに反応できない。「それまでは楽だったから、あれが本当にもったいなかった。今日のレースがメダルとの距離だと思います」。優勝したチェプコニーは30~35キロの5キロを14分46秒と急加速。15分17秒に落とした川内は太刀打ちできなかった。

 レース前夜の“お約束”のカレーは、何かの因縁か?

 宿舎近くでエスビー食品製の2パックを購入する“誤算”。もちろん収穫はある。わずか6週間前に出した8分台を再びマーク。並んでいた中山竹通を抜き単独で日本歴代17位にランクされた。何より自己ベストで12人も速いアフリカ勢の走りを肌で感じたことが大きい。「本当は実業団の選手が、海外に出て日本の強さを示さないといけない。自分が切り開いて少しでも刺激になれれば」。8月に訪れる2度目の世界舞台が待ち遠しい。【渡辺佳彦】