日本競泳陣が元気だ。オーストラリアのゴールドコーストで24日まで行われたパンパシフィック選手権で過去最多の金メダル7個を獲得。銀が8、銅が3と、合計19個ものメダルを手にした。

 パンパシフィック選手権は、もともと欧州選手権に対抗して誕生した大会だ。環太平洋(パンパシフィック)の国が中心で、12年ロンドン五輪の競泳メダル数上位4カ国(米国、日本、中国、オーストラリア)が参加するため、レベルはかなり高いといえる。

 水泳界にとっては、リオで世界と戦える顔が増えたことが喜びだろう。萩野公介や瀬戸大也ら、すでに五輪や世界選手権で実績を持っている選手に加え、男子平泳ぎの小関也朱篤や女子平泳ぎの渡部香生子らが金メダルを獲得。リオ、さらに6年後の東京五輪に向けての楽しみが増えた。

 実は、最もエキサイティングだったのは、男子800メートルリレー。日本は米国に次いで2位に入った。その差は0・13秒。アンカー勝負でわずかに劣ったが、3泳目までは勝っていた。熱くなるレースだった。

 800メートルリレーは「国の競泳力を表す種目」と言われる。200メートル自由形という最も力のいる種目の選手を4人そろえる。1人のスターがいても勝てない。だから「国の力」が順位に表れるわけだ。

 競泳のリレー種目では最も古く、五輪では1908年ロンドン大会から実施されている。日本で注目される400メートルメドレーリレーは60年ローマ大会から、400メートルリレーも64年東京大会からだから、伝統が分かる。

 この種目で圧倒的に強いのが米国だ。24回行われた五輪のレースで、実に16回優勝。不参加だった80年モスクワ大会以外、表彰台を逃したことはない。「水泳王国」と呼ばれる理由でもある。

 そんな米国と接戦をしたのだ。確かに米国は万全ではなかった。それでも、ロクテやフェルプスがいるチームと互角に泳いだ。日本の自由形陣にとっては、大きな自信になっただろう。

 実は、日本もこの種目で五輪の金メダルを獲得したことがある。32年ロサンゼルス大会と36年ベルリン大会。戦前「水泳ニッポン」と呼ばれた頃のことだ。当時の日本の自由形は強く、32年大会では100メートルと1500メートルでも勝っている。この伝統は戦後、古橋広之進、橋爪四郎時代まで続くことになる。

 近年は「自由形では日本人は勝てない」が定説になっていた。強いのは平泳ぎや背泳ぎなど「特殊種目」だけ。自由形は体格やパワーに勝る欧州や米国に勝てないというのだ。

 それでも、日本は自由形強化を続けてきた。09年に亡くなった日本水連の古橋広之進元会長は「自由形が強くなければ水泳が強いとはいえない」が持論。その「遺言」を守るように、強化に取り組んできた。

 ようやく、自由形にもメダルが見えてきた。今回、個人種目では届かなかったが、リレーなら可能性はある。6年後の東京五輪、800メートルリレーで米国と競り合うようになれれば、その時こそ本当の「水泳ニッポン復活」になるだろう。