16年リオデジャネイロ大会での五輪4連覇が見えた-。レスリング女子53キロ級の吉田沙保里と同58キロ級の伊調馨。22~24日に東京・代々木第2体育館で行われた全日本選手権でも圧倒的な力を見せた。04年アテネ大会から、ともに五輪で3連覇中。昨年の階級変更で吉田は55キロから53キロ級へ、伊調は63キロから58キロ級へ変わったが、それでも強さは変わらない。いや、さらに強さを増したようだ。

 吉田は初戦の2回戦から4試合をテクニカルフォールかフォールで圧勝。1ポイントもとられていない。55キロ級世界選手権優勝の浜田千穂との「女王対決」の決勝も、開始わずか53秒でフォール勝ちした。伊調も失ポイント0で優勝。あまりの強さに有力選手が対戦を回避し、出場はわずか7人だった。6月の全日本選抜、9月の世界選手権、そして今大会といずれも無失点の優勝。今年は1ポイントも取られていない。

 男子に比べて世界的に普及度が低く、トップ選手の層も薄い女子。とはいえ、その中で2人はケタ違いの強さを見せる。吉田は19歳の時の01年全日本選手権で敗れて以来、団体戦では2敗を喫しているものの、個人戦では無敗。伊調も18歳の時の国際大会で敗れて以来、07年アジア選手権の不戦敗を除けば試合をして負けたことは1度もない。

 階級変更も、ともにプラスに働いている。もともと減量がない2人。それどころか、4しかない五輪階級に合わせるために増量していたほどだ。相手が1回り小さくなる分だけ、技はかかりやすくなる。パワーも伝わりやすくなる。スピードとターゲットの小ささはあるものの、2人が所属するALSOKの大橋監督や代表のコーチ陣も「今の階級の方が合っている」と口をそろえる。年齢的にリオは苦しいという見方もあったが、ともに階級変更で世界との差は開いたといえる。

 今大会の優勝で、来年9月の世界選手権(米ラスベガス)代表は当確。選考大会は来年6月の全日本選抜もあるが、栄和人強化委員長は48キロ級世界連覇の登坂絵莉、69キロ級世界2位の土性沙羅とともに吉田と伊調についても「出さないわけにはいかない」と話す。

 来年の世界選手権はリオ五輪の1次予選会。上位6人の国に出場枠が与えられるが、23日に行われた理事会では「メダルを獲得した選手は12月の全日本選手権出場で代表に内定する」ことが決まった。つまり、世界選手権メダル獲得で事実上代表内定。ケガでもしない限り(伊調は左足首のじん帯を切りながらロンドン五輪で優勝したが)、吉田と伊調がメダルを逃すとは考えにくい。4連覇の舞台に立つ可能性は限りなく大きいといえる。

 五輪の個人種目で4連覇すれば、女子選手では史上初。日本人選手としても初めてになる。長い五輪の歴史でも、4連覇は過去2人だけ。陸上円盤投げのアル・オーター(米国)と陸上走り幅跳びのカール・ルイス(米国)しかいない。吉田と伊調は、世界のスポーツ史に残る偉大な記録に確実に近づいている。