<フィギュアスケート:全日本選手権>◇22日◇さいたまスーパーアリーナ

 男子の高橋大輔(27=関大大学院)が、壮絶に散った。SP4位で迎えたフリーは、右すねのケガを押して4回転2本にトライ。ともに失敗してミスを重ねた。170・24点で合計252・81点の5位と順位を下げた。五輪代表は2連覇の羽生結弦(19=ANA)と2位町田樹(23=関大)の初五輪が確実。3人目は高橋と3位小塚崇彦(24=トヨタ自動車)との争いで、今日23日に日本スケート連盟の理事会で正式決定する。

 血でぬれていた。泣いていた。高橋は、演技を終えて目を赤くした。「自分の中でもう五輪はないんだろうなと思ってしまった。これが多分、最後になる、最後の演技になるんじゃないかと」。集大成と位置づけた今季、全日本で5位の結果に無念さをにじませた。

 手負いで玉砕した。冒頭の4回転で転倒。右手中指から大流血した。「べたべたしていたので鼻水かな」。そのまま2本目の4回転。「すごく迷った。考えると負ける自分がいたと思う。冷静ではなかった」。両足着氷で失敗。その後は演技を立て直せなかった。「ミスを重ねていくうちに、これで終わりかな」。リンクサイドで長光コーチに「2本目は3回転でよかったのに」と言われた。高橋は「あまり(4回転を)やらずに、というのはなかった。自分らしいかな」と、涙を浮かべて寂しく笑った。

 11月26日に右脛骨(けいこつ)骨挫傷。08年に右膝前十字靱帯(じんたい)を断裂しており「ハードに練習すると痛みが出てくる」という古傷に負担がかかった。「膝にまた同じようなことが起きてスケートが滑れなくなると困る」。恐怖心と闘いながら急ピッチ調整も、左右の足で筋肉のバランスが崩れた。けがについて「影響がないとはいえないが、昨日と今日の演技が僕の実力」。長光コーチは「正直あと1週間ほしかった。最後の五輪を決める試合で万全でないのが本当に残念」と涙を浮かべた。ただ4回転は「五輪で金メダル」をとるために3年計画でトライしたもの。安全策で逃げることはしなかった。

 本人は悔し涙を流したが、代表入りの可能性は残されている。羽生、町田は当確。3人目は、高橋と3位小塚との争いになる。日本連盟の小林芳子フィギュア強化部長はこの日、現在の選考基準を作った最大の目標について「金メダルを含む複数メダルをとれる選手たちを選ぶ」と明言している。

 高橋は演技構成点で常に9点台をキープしている。日本連盟は、本大会まで残り2カ月の期間と、表彰台に上がれる可能性を視野に入れて、高橋と小塚から1人を選ぶことになる。「今季はいろんな面で気持ちで逃げていた自分がいた。自分が腹立たしく、情けないと思った」と自分を責めた高橋。5位高橋が3位小塚を上回れば逆転代表といえるが、3度目の五輪切符をつかむ可能性はある。【益田一弘】