<第86回箱根駅伝>◇3日◇復路◇箱根-東京(5区間109・9キロ)

 連覇であっても、東洋大にとって出場68回目で初めての胴上げだった。昨年の優勝時は大会直前の部員の不祥事で自粛。今年はもう制限はない。はやる気持ちを抑えられない選手たちが輪をつくる。最大の立役者、柏原を中心に酒井監督を都心のビル群に囲まれた大空へ投げた。

 往路5区で「魔神」柏原がつくった3分36秒の貯金は、復路メンバーに勇気を与えた。箱根デビューの7区の田中(2年)は緊張感もあった。だが前日夕方、柏原から電話で「貯金をつくったから、使っていいよ」と言われ、気持ちが和らいだ。6区で2分50秒差に縮まったリードを区間賞の走りで、4分27秒差に再び広げた。

 柏原に頼り切った優勝ではなかった。唯一の1年生だった6区の市川も粘った。最初は笑顔で走っていたが、16・9キロ付近では泣き顔のようになった。5キロすぎに左足親指が内出血を起こし、激痛が走った。「最後は足がしびれて動かなかった。でも気合で乗り切りました」。リードは縮められたが、タスキをしっかりと後続につないだ。

 結局、相手の視界に背中を見せることはなかった。復路では往路のリードを10秒広げて、2位駒大と3分46秒差の圧勝。確かに柏原効果もあった。だが柏原のいない復路でも、ライバルを突き放した。9区の工藤は「柏原の力を借りるところは借りて、つないで走ることも大事。今日は復路の安定で勝負できた」と胸を張った。

 2年連続でMVPに相当する金栗(かなぐり)賞を獲得した柏原は、連覇の中にチームとしての成熟を感じていた。「昨日は1~4区まで攻めの気持ちでタスキを持ってきてくれた。去年の4年が抜けてもチームワークがよかった」。連覇は、東洋大のチーム力の証しだった。【広重竜太郎】