28日に開幕した北東北(青森、岩手、秋田、宮城)開催の全国高校総合体育大会(インターハイ)に出場する被災地の女子ハンドボール部が、韓国現役代表選手の支援を得て、30日に初戦を地元岩手県花巻市で迎える。県立不来方(こずかた)高で、監督の小川至門(しもん)氏(37)と結婚した04年アテネ五輪ハンドボール女子銀メダリストで今年3月から指導してくれた張素姫(チャン・ソヒ=33)と被災者との思いを胸に出陣する。

 06年、東女体大に留学した張は、知人を通じて出会った小川氏と09年から交際を開始した。鹿児島を拠点に選手活動を続けながら、震災を機に結婚を決意した。「日本がこんな状態になって、心が落ち着かなかった。お互いの関係をはっきりさせて、責任を持って頑張ろうと思いました」。

 2月にプロポーズされた後、同部の練習に顔を出し、監督の婚約者として部員の前で紹介された。そして、世界レベルのプレーを見せ、部員に刺激を与えた。「シュートへ持ち込む体勢や、試合中の動き方など、アドバイスしています」。小川監督は「指導は監督の役目ですが、彼女は選手の感覚的なものを見せてくれる」と感謝している。

 同高は内陸にあり、東日本大震災による被害は少なかったが、震度6弱の揺れを経験した。インターハイには9年連続出場で今回は被災県第1代表として、チーム初の8強入りを目指す。「震災を乗り越えて頑張ってほしい。強気で戦って」と張。現在は韓国代表に帯同し、10月中旬のロンドン五輪アジア予選(中国)に備えている。「五輪が終わったら、盛岡で生きていきます」。やまとなでしことなり、夫が指導するチームの後方支援を続けるつもりだ。【柴田寛人】

 ◆張素姫(チャン・ソヒ)

 1978年3月15日、韓国・ソウル生まれ。小6からハンドボールを始める。99年に韓国代表入り。01、03年の世界選手権出場。04年アテネ五輪では決勝でデンマークに敗れ、銀メダル。日本リーグの09-10年シーズン終盤にソニー入りし、初優勝に貢献。今年1月の全日本総合選手権でも初優勝に導き、最優秀選手に選ばれた。今秋に7年ぶりの韓国代表復帰。161センチ。血液型AB。