赤土最高峰を勝ち取る! テニスの4大大会の今季第2戦、全仏オープンが24日開幕する。大会初日の1回戦に登場する世界5位の錦織圭(25=日清食品)が、日刊スポーツの単独インタビューに答えた。「いつになく大きな自信を持って全仏に入れる」と手応えを口にし、過去最高の13年のベスト16を上回る4強以上を狙う、と力強く語った。(聞き手=吉松忠弘)

 全仏前哨戦のクレーコート3戦で10勝2敗。敗れたのは世界1位のジョコビッチ(セルビア)と同3位のマリー(英国)だけだ。上位進出への自信はこれまでになく大きい。

 錦織 これまでで最高の準備ができた。試合数も数多くこなせて、いつになく大きな自信を持って全仏に入れる。イタリア国際で、ジョコビッチと対戦した時、(奪った)第2セットのようなプレーが続けてできれば、十分に戦えると感じている。

 初戦は、全仏会場でともに練習した同123位のマチュー(フランス)が相手だ。勝ち進めば準々決勝で同4位のベルディハ(チェコ)、準決勝で同2位のフェデラー(スイス)と対戦予定のブロックに入った。

 錦織 組み合わせの先は見ない。1戦1戦に集中したいと思っている。マチューは、練習でも強さを感じた。両サイドともにストロークが強く、油断がならない相手。気を抜けば負けることもある。

 4大大会の本戦出場は、今大会で23大会目。日本人では松岡修造に次ぐ多さ。戦い方も熟知してきた。

 錦織 2つに分けて考えている。ベスト8は最低条件。まず、ベスト8までは行って、今度は、そこからどうやってベスト4、決勝に進んでいくか。その2段階目がとても難しい。まだ、なかなかその壁が抜けられないので、いろいろ作戦を練って考えていきたい。

 今季、全仏まで31勝7敗。総試合数38は、ベルディハの41、フェレール(スペイン)の39に続く3番目の多さで、自身最多でもある。今年は1度の途中棄権もなく欠場もない。

 錦織 大きなケガがないのが、一番うれしい。もちろん、疲れや少しの痛みはある。でも、この2、3年のトレーニングや、痛みが出た時のケアで戦える体になってきた。今も、少しは痛みがあるが、十分に戦えると感じている。

 今年の1月の全豪で、世界ランキングについて「5位は居心地が悪い。15位ぐらいが楽」と話した。しかし、世界ランクの重圧でがんじがらめにされた、かつての姿はもうない。

 錦織 昨年のマドリードオープンが終わって、初めてトップ10に入った時、大きな目標が1年を通じてトップ10をキープすることだった。今、1年たって、キープできたことは感慨深い。すごい進歩だし、すごい自信になる。今は、トップ10が当たり前になってきて、定位置にいるという実感もある。

 対戦する選手が、錦織の実力を認めてきたことも実感している。競ってくると、「錦織に勝てるかも」と意識して、勝手に崩れてくれる場面があるという。

 錦織 今年に入って、よくある。しっかり集中してプレーしていると、相手が崩れてくれたり、前になかった試合展開になる。それも、ちゃんとトップ10をキープしていることで、みんなに強さを示すことができていると感じている。

 1週ごとの世界ランキングには一喜一憂しない。ただ、トップ10を1年キープし、さらに上を目指す段階に入ったとの思いも強い。

 錦織 世界ランキングは、ころころ変わるので、途中で気にしてもしょうがない。もちろん、4位以上になれば、また(大会のシードなどで)違ってくる。昨年は、少し(躍進で)びっくりした年だった。今年は、昨年とは違い、さらに向上心がある。これから、どんどん上を目指せる気持ちになってきている。

 赤土の戦い方は、全仏5連覇中のナダル(スペイン)に代表されるように、粘りと精神力が基本だった。しかし、錦織は、守備より攻撃を重視する新たな赤土攻略法を生み出した。

 錦織 いくらクレー(赤土)といえど、守ってばかりでは、トップの選手には勝てない。なるべく(ベースラインより)前に入って攻めなくてはいけない球を見逃さず打っていきたい。昨年は、それが十分に通じた。今年も、そのスタイルは基本的に変えていないし、さらに磨きをかけたいと思っている。

 全仏では13年のベスト16が最高。腰に不安があった昨年は1回戦で敗れたが、機は熟してきた。悲願の4大大会制覇に向け、赤土最高峰の舞台が待っている。

 錦織 全仏は、ジュニア時代はいい思い出が多い。ジュニアのダブルスで優勝したのも全仏だった。また、この2年で、赤土で、こうやって結果が出ているのは、すごく自信になる。もちろん、簡単でないのは分かっているが、できればベスト4より上を狙っていきたい。

 ◆WOWOW放送予定 24日午後5時30分~、WOWOWプライム。同日午後10時~、WOWOWライブ。ともに無料放送。男女シングルス1回戦。生中継。放送時間変更の場合あり。