錦織圭(25=日清食品)がツアー今季3勝目、通算10勝目を挙げた。4月のマイアミオープン準々決勝で敗れた同18位のイスナー(米国)に4-6、6-4、6-4の1時間54分で逆転勝ちした。左ふくらはぎを痛めて棄権したウィンブルドン選手権以来、約1カ月ぶりの復帰戦で準々決勝からビッグサーバーに3連勝。米国での夏場のハードコート初戦を制し、昨年準優勝した全米オープン(31日開幕、ニューヨーク)に向けて弾みをつけた。

 身長208センチのイスナーの横で、178センチの錦織が高々と一番大きなクリスタルトロフィーを掲げた。完敗した4月の雪辱とともに、区切りのツアー通算10勝目を挙げ「この優勝は大きい。雪辱できて本当にうれしい」。勝利の瞬間、力いっぱい、ボールを観客席に打ち込んで喜んだ。

 巨人を崩した。4月の初対戦時にはブレークポイントさえ握れず、ストレートで完敗した。しかし、この日は、約3メートルの高さからたたき込まれる最速230キロ前後のサーブをたびたび好返球。ストローク戦で振り回し、フラフラにさせた。第1セットは落としたが、続く2セットを連取。「第1サーブの読みが当たり、返せたときはポイントが取れた。作戦が当たった」と狙い通りの展開だった。

 錦織のサーブは最速で時速200キロ前後と速くない。ただ、サービスゲームを1回落としても、相手のサーブを2回破ることで勝利に結びつける。それがビッグサーバーとの対戦では1度でも落とせば敗戦が色濃くなる。小柄な錦織が受ける重圧は並大抵ではない。

 今大会、そのビッグサーバーに3タテを食らわせたことは大きい。準々決勝は世界最速263キロのサーブを持つグロート(オーストラリア)。準決勝は昨年エース数4位のチリッチ(クロアチア)で、決勝は同3位のイスナー。特に決勝で対戦したイスナーのサーブは、第1サーブが入る確率が70%前後と高い。しかし、錦織は「リターンで前回より攻撃的に返すことができた」と、高い修正能力で敗戦の反省を生かした。

 昨年は、この大会で右足親指のできものが悪化。大会後に手術し、全米まで欠場した。13年もトップ10目前の重圧で、米国でのハードコートでは3勝4敗と負け越した。「(夏に)今季3勝目というのはうれしい。全米に向けいいスタートが切れた」。全米前に、今週を含みマスターズ大会が2大会。優勝で弾みをつけて初のマスターズVにも挑む。