「新生・真央」で魅せる。日本、欧州、北米の3地域が団体戦形式で争うフィギュアスケートのジャパンオープンは、今日3日にさいたまスーパーアリーナで開催される。1年間の休養をへて復帰戦となる元世界女王の浅田真央(25=中京大)は2日、前日練習に参加。代名詞のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を3回すべて成功させながら、「特別と捉えなくなっている」と心境の変化を口にした。初めて着物風の衣装を用意したフリー「蝶々夫人」を携え、どんな新たな滑りを描くのか。

 浅田と3回転半は切っても切れない関係にある。こだわりが生む演技のモチベーションであり、コンディションを如実に表すジャンプは、1つの要素に収まらない意味があった。試合会場での練習は、同じさいたまスーパーアリーナで行われた14年3月の世界選手権以来。優勝したその時のレベルに戻すことを第一の目標に据えた浅田だけに、この日も3回転半の跳躍に多くの目が注がれた。ただ、本人は違った。

 「自分の意識の中で、もうアクセルというジャンプは特別なジャンプと捉えることなくきています。それだけ自分の中にちゃんとアクセルがある、という感じですね」。

 約1時間の練習で、跳んだのはたった3回。その本数は従来に比べれば、極端に少ない。比率もそうだが、感触も異なっていた。「やっぱ、楽に跳べるようになったなと感じますね。いい感じに自分のスポットに入っている。力の入れ具合がうまく自分の中でコントロールできてきている」。フィギュア用語でスポットとは、跳ぶためのあまたの要素がかみ合うという意味合いがある。そして、続けた言葉が強烈だった。「ソチのシーズンよりはいいアクセルが跳べている」。

 だからこそ、良い意味で「特別」ではなくなっている。そしてその分、注力できることがある。例えば、表現。今回はフリー「蝶々夫人」に合わせて、初めて着物風の衣装を着る。本人の意向を強く反映させた一品は「チョウチョもつけて、自分の好きな色も使ってます」。悲恋をテーマに、新境地を演じる。

 ジャンプの構成は14年世界選手権と同じ。ただ、「あの時の良いイメージがある」という同じ会場での復帰舞台は、「あの時」にはなかった姿をみせる時間となる。「人生においても、1年間休んで良かったと思えます」。そう口にした時期が、新たな輝きをもたらす。【阿部健吾】