2季ぶりの宿敵との戦いは悔しさで終わった。男子でショートプログラム(SP)6位と出遅れたソチ五輪王者の羽生結弦(20=ANA)は、フリーで186・29点の2位と巻き返したが、合計259・54点で2位に終わった。昨季は休養にあてた世界選手権3連覇のパトリック・チャン(カナダ)がフリー1位の合計271・14点で優勝。羽生は直接対決で3勝7敗となった。SP1位の村上大介(24)は3位、川原星(19)は10位。

 「2位は正直、悔しい」。短い言葉に羽生の気持ちが透けた。単純に順位の話ではない。自分より上に立った人物が誰かが問題だった。チャンは、ソチでの頂点を巡って激戦を繰り広げてきた最大のライバル。復帰してきたカナダの英雄を歓迎する同地で、今季男子フィギュア界最大の注目である2季ぶりの対決で敗れた。「もっと余裕を持って最後まで滑りきれるような演技をしていきたい」と総括した言葉が、平常心ではなかった大会中の心を示しているようだった。

 「GP初戦から当たると言うことで、ワクワクもしているはいるんですけど…」。シーズンを控えた今夏、チャンのことを聞かれると、切り出した。続けたのは「特に気負いはないですね。今そういうことに気を取られている場合ではなく、自分のプログラムをいかに完成させるかに重点を置いているので」。過剰に意識せず、平静を心がけるように言った。

 前日のSP。先に滑ったチャンが精彩を欠いたことでわずかな余裕が生まれた。それが作用し、「1個1個(の要素)に集中はしていなかったのかもしれない」とジャンプにミスが続いたことを認めた。やはり、意識をしていた。

 迎えたフリー。その心の動きをどう制御するかが問題だった。今度は自分が先に滑る番。そこで見せたのは、「自分の中では頑張った方だと思う」演技。冒頭のサルコー、続くトーループと4回転を続けて決める。前戦のオータム・クラシックで転倒した後半の4回転は、氷に手をついたが、2回転との連続ジャンプへつなげた。「なんとか耐えることができた。1つ進歩した」と巻き返した。

 チャンはその後の滑走で、しっかりと得点を積み上げ、逆転を許さなかった。心理面での改善に手応えがあっても届かなかったからこそ、より一層、「2位は正直、悔しい」のだろう。ただ、まだシーズンは始まったばかり。「こんなもんです、まだ。もっと頑張ります」。こんなもんでない滑りはみせる。それがこの悔しさを晴らす時だ。