女子初の五輪4連覇を目指す58キロ級の伊調馨(31=ALSOK)が、異次元の強さで12回目の優勝を果たした。準決勝をテクニカルフォール、決勝をフォールで圧勝。昨年に続いて今年も失ポイント0のまま全日程を終えた。大会出場で、4大会連続の五輪代表も正式決定。4回目にして初めてベストの体重で臨めるリオデジャネイロ大会に向けて「ガチ勝負になる」と、満足のいく内容での金メダル獲得を宣言した。

 決勝の増田戦、伊調は1分過ぎに「また裂き」から相手を裏返すと、そのままフォールで優勝を決めた。そんな圧勝にも笑顔はない。試合開始直後、先にタックルに入られた。足をとられたものの冷静に切り返した。それでも「こっちが先にと思っていたのに先に入られて悔しい」と話した。

 毎試合、課題を持って臨む。この日は4つ。「がぶり」「飛行機投げ」「アンクルホールド」「ハイクラッチ」。それぞれ細かく状況を設定し、入り方を決めている。しかし、できたのは2試合で1つだけ。「課題を意識し過ぎた」と反省した。9月の世界選手権で「25点」とした自己採点は「あげられない」だった。

 無理もない。レベルが違いすぎるのだ。2手、3手先を読んで課題を組むが、相手は1手で倒れる。早く試合が終わりすぎ、試したい技も出せない。決勝戦のフォール直前「逃がそうかと思ったけれど、それも相手に失礼なので」。秒殺を残念がった。

 2年前のこの大会で失点してから、2年間は失ポイントもなし。「1点でも取られると悔しいから」と平然と話す。6分間戦ったのも、63キロ級五輪代表の川井との2試合だけ。国内外に相手はまったくいない。

 ロンドン五輪までは63キロ級。無理に増量していたから「バタバタだった」。しかし、リオは本来の体重で戦える。「今度は言い訳ができないし、ガチ勝負になる。ロンドンから進化している」。来年1月には試合相手を求めてヤリギン国際(ロシア)に出場予定。圧倒的な強さで、女子史上初の4連覇にわずかな死角もない。【荻島弘一】