世界ランキング5位の日本が同13位のタイに3-2で逆転勝ちした。

 17日の韓国戦で右手小指を負傷した木村沙織主将(29=東レ)が先発を外れ、第1セットを奪われたが、木村が入って第2、4セットを奪い、最終セットは相手が審判から2度のレッドカードを受けたことによる2点も絡んで8連続得点で大逆転。フルセット勝ちのため獲得した勝ち点は2にとどまり2位から4位に後退したが、五輪出場権獲得に向けて前進した。20日は同7位のドミニカ共和国と対戦する。

 6人は輪になり、手をつないだ。最終セット、6-12から2点を返すも、4点差とピンチは変わらない。大歓声の中、木村主将は仲間を集めた。「手を握って。消えそうな光を、みんなで最後まで信じて」。相手のレッドカードで3点差。セッター宮下のサーブが決まる。WS石井が同点のスパイクを決めると、会場のボルテージは最高潮に達した。荒木田強化部長が「奇跡だ」とうなる崖っぷちからの8連続ポイント。最後は、小指を痛めた木村の右手を円陣で握っていたWS迫田が決めた。

 試合開始の約6時間前。普段はないやりとりがあった。日本代表の選手・スタッフ34人が入ったLINEグループ「火の鳥NIPPON」に1通のメッセージが入った。「気持ちが強いチームが五輪をつかむ。今ここにいないメンバーもいる。コートに立てるのは14人しかいない。スタッフと(登録外の)4人がサポートする。全力で頑張れ」。メッセージには、直前で落選した選手の名前も書かれていた。迫田はクマが炎を上げている「頑張ろう」というスタンプ、木村主将は「ファイト!」と文字入りのスタンプなど、全員が反応。17日の韓国戦での敗戦に加え、木村主将のケガ。苦境に立たされた中、突然のメッセージがチームを奮い立たせた。送ったのは、いつもそばで選手を見守る宮崎マネジャーだった。「絶対負けられない試合だったので」。理由はシンプルだった。

 試合前、チームは円陣と「火の鳥ニッポン、よし!」のかけ声で士気を高める。声かけ役は登録外の4人の役目だ。昼のLINEを見た大竹は「なにか変えよう」と必死に考えた。試合コートに向かう直前。言葉をつけ足した。「心を1つに、チーム全員で戦い抜きましょう」。真鍋監督が「何十年に1度」と話す大逆転劇を見せた日本が試合後にコートで作った円陣には、登録外4人の姿があった。

 韓国戦(17日)の敗戦のショックから、チーム全員で立ち上がった。「1人1人がつながって何かを成し遂げるって、すばらしいことだなと感じました」と迫田。日本には、コートに立つ6人を超えた絆がある。【岡崎悠利】

 ◆五輪の出場条件 男女とも世界最終予選(東京体育館)で決まる。ともに8カ国が総当たりで対戦し、順位を決定。日本はアジア4チームの中で1位となるか、それ以外の7チームのうち3位までに入れば出場権を獲得する。順位は勝敗で決め、並んだ場合は(1)勝ち点(2)セット率(3)得点率の順で決める。勝ち点は3-0または3-1の勝利=3点、3-2の勝利=2点、2-3の敗戦=1点、1-3または0-3の敗戦=0点。ブラジル、ロシア、アルゼンチン、米国、カメルーン、中国、セルビアは出場権獲得済み。