2020年東京五輪招致の不正疑惑で、日本オリンピック委員会(JOC)が設置した外部の調査チームが1日、調査報告書を公表した。招致委員会がシンガポールのコンサルタント会社と結んだ総額2億円超の契約に違法性はなく、国際オリンピック委員会(IOC)の倫理規定違反にも当たらないと結論付けた。

 招致委は13年に国際陸連前会長のディアク氏の息子と関係があるとされるシンガポールのブラックタイディングス社(BT社)と契約したが、その支払いがディアク氏側に渡ったとの疑惑が持たれ、フランスの検察当局などが捜査していた。ディアク氏は当時、五輪開催都市決定で投票権を持つIOC委員だった。

 報告書は、契約額を高額としたが、招致委側に贈与の認識はなく、BT社の代表、タン氏が「(招致活動で)極めて秘匿性の高い情報を入手できる立場にあった」として契約の成果も認定した。

 一方で、契約当時、招致活動で海外にいることが多かった招致委理事長(竹田恒和JOC会長)に代わって手続きを進めた事務局長らが、決裁の際に理事長に十分な説明をしなかった点について「手続きの透明性という観点から一定の問題がある」と指摘した。

 調査チームで座長を務めた早川吉尚弁護士は記者会見で「招致委の贈賄についてはクリアに疑いが晴れたと思っている。その結果に満足している」と述べた。

 弁護士2人と公認会計士1人の調査チームは5月に設置され、JOCが守秘義務を理由に開示していなかった契約書を閲覧したほか、国内外の34人の関係者に聞き取り調査を実施。シンガポールでの現地調査も行ったが、タン氏には接触できなかったという。