16歳のスーパースイマーが、新年に2020年東京五輪メダル獲得を誓った。競泳で5種目の日本記録を持つ池江璃花子(ルネサンス亀戸)が、日刊スポーツの新年インタビューに応じた。七五三以来、9年ぶりの振り袖姿を披露。書き初めでは「東京五輪でメダル」と筆で記し、3年後に迫った大舞台への決意を込めた。

 振り袖に身を包んだ池江は、迷うことなく筆を動かした。「東京五輪でメダル」。普段はほとんどしない化粧で、大人びた表情になった16歳は2020年東京五輪での夢を語り始めた。

 池江 最大目標。100メートルバタフライをメインに、自由形でも活躍したい。

 リオ五輪は日本人史上最多7種目に出場。女子100メートルバタフライでは予選から日本記録3連発で5位入賞。メダルまで0秒23差に迫った。初の大舞台での躍進。予感は五輪直前だった7月のブラジル・サンパウロ合宿からあった。

 池江 ここで変わった。五輪が近づいて、緊張するはずですが、楽しいと思うようになって、やる気も出てきた。以前はそんなに練習が好きではなかった。でもサンパウロからは、きつい練習が終わっても、もうちょっと泳ぎたいと。きっかけは分からないけど、自然とそうなったんです。

 意識改革の成果は、五輪後にも発揮されている。昨年8月17日にリオから帰国すると、翌日から広島での高校総体に出場。その後、ジュニアオリンピックを経て9月のいわて国体と連戦。国体では50メートル自由形で日本記録を出した。わずか1週間のオフを取った後、10月W杯、11月アジア選手権に出場。同選手権100メートル自由形でも日本記録をマークした。

 池江 五輪が終わって、ホッとするより、大会が続いていたので、気は緩められなかった。五輪だけでなく、どの試合も手は抜けないので。

 中学3年だった15年10月、100メートルバタフライで日本記録を出して以来、昨年11月まで、実に12回の日本記録を出している。

 池江 今は自己ベスト=日本記録になってきた。日本記録ではなく、自己ベストを出すことがうれしい。これからも常に目指していきたい。

 16歳の逸材には、型破りな面もある。好きな食べ物はチョコレート。五輪直前まではレース前は必ず食べていた。

 池江 水着に着替えるギリギリまで食べていた。五輪前からやめましたが(12月の)世界短水路選手権100メートルバタフライの前日は、チョコを10袋以上食べまくった。それでも記録(日本記録で銅メダル)は出た。板チョコは1枚では物足りない。2枚は余裕です。

 サッカーの中田英寿氏、メジャーリーガーのイチロー、体操の内村航平らは偏食といわれる。突き抜けたトップ選手は食でも常識にとらわれないのかもしれない。

 東京五輪の3年前となる今年は世界選手権(ハンガリー)が最大のイベントになる。タイムは伸び続けているが、いつか止まる不安はないのか。

 池江 タイムが出なくなっても、乗り越える自信がある。今のように泳いでいるだけで楽しいと思っていられれば、スランプが来ても大丈夫だと思います。

 休みの時は家でゴロゴロするか、たまに外食するくらい。

 池江 今は恋愛はいいかなと。水泳一筋というわけではないですが、今は特に興味がない。泳いでいることが楽しいから。

 恋人は水泳。好きこそ物の上手なれを地でいく16歳の勢いは今年も続く。【取材・構成=田口潤、高場泉穂】

 ◆池江璃花子(いけえ・りかこ)2000年(平12)7月4日、東京都生まれ。母美由紀さんが水中出産した「水の申し子」。3歳から水泳を始める。15年世界選手権は、中学生として14年ぶりに代表入り。50メートルの長水路では100メートルバタフライなど、5種目の日本記録を持つ。170センチ、54キロ。