プレーバック日刊スポーツ! 過去の2月26日付紙面を振り返ります。2006年の1面(東京版)は、トリノ五輪金メダルによる荒川静香フィーバーを報じています。

◇ ◇ ◇

 静香狂騒曲が始まった。フィギュアスケート女子で金メダルを獲得した荒川静香(24=プリンスホテル)の株が、急上昇している。凱旋(がいせん)試合となる3月のアイスショーのチケットが、ネットオークションで高値で取引されるなど、人気沸騰。アイスクリーム好きの荒川に、日本アイスクリーム協会も商品化の可能性を探るなど、女神をめぐる周囲の動きは過熱するばかりだ。

 静かな日は、まだまだやってこない。日本フィギュア界初の五輪金メダルに輝いた荒川。それまでメダル0と低迷していた日本選手団の、救いの女神になった幸運にあやかろうと? 各地でフィーバー余波が巻き起こっている。

 凱旋帰国後、最初のお披露目となるのが3月4、5日に東京・有明で行われるアイスショー「シアター・オン・アイス」。そのチケットが、ネットオークションで急騰していることが分かった。定価1万5750円の席が約5倍の7万円以上で取引された。村主、安藤、高橋の日本代表選手やプルシェンコ(ロシア)ら各金メダリストも参加するため、荒川人気だけとはいえない。だが、直筆サイン色紙は軒並み2万円超え。通常ならオークションにかけられそうもない、荒川が出演中のCM商品にも、60件以上の入札が殺到している。熱狂ぶりは本物だ。

 舞姫の嗜好(しこう)品に着目したのは、日本アイスクリーム協会だ。「アイスクリームが大好き」と公言する荒川に対し、全国98%のアイスクリーム関連企業が属する同協会広報担当の菊地瑶子さんは「もし可能なら、ぜひ荒川選手のジェラートを作らせていただきたい」とラブコール。五輪前から、荒川のアイスクリーム好きは話題になっていたといい「帰国したらぜひ、アイスクリームを毎月でもお届けしたい」と起爆剤に目をつけた。「アイスクリーム・クイーン」の称号を贈ることなども検討するという。

 荒川は24日のエキシビションに金メダリストとして参加した。もはや荒川の代名詞ともいえるイナバウアーなど、金の舞をたっぷり披露し、満員の観客を魅了した。ようやく優勝の実感がわいてきたのか、予想される列島フィーバーに「2カ月も日本にいない浦島花子ちゃんだから、まだ分からないですけど、よくテレビで見る光景になるんですかねぇ。楽しみ半分、怖さ半分」と笑った。そんな想像通りの現象が、日本で起き始めている。荒川をめぐる熱狂は、今日26日に五輪が閉幕しても当分、収まりそうにない。

 荒川が、アマチュア選手としての現役続行に含みを持たせた。25日の単独会見で、来年3月に東京で開催される世界選手権について「せっかく日本で行われるので出たい、という気持ちは強い」と現段階の心境を吐露。「今のところは未定です」と付け加えることも忘れなかったが、出場の可能性を否定しなかった。

 優勝直後の会見では「これからはアイスショーなどで滑っていけたら幸せ」などと、アマチュアの引退も示唆していた。だが、日本で行われる世界選手権は心残りの1つ。94年幕張大会は海外遠征で観戦できず、02年長野大会は出場できなかった。エキシビション後には「金メダルを取ったことで、もっと取らなきゃという力みがなくなった。上に行かなきゃということもなく、気持ちよく滑れるかもしれない」と微妙に揺らぐ心境も明かしていた。

 周囲も、アマでの現役続行を勧めている。関係者によるとモロゾフ・コーチは「このまま辞めるのはもったいない。東京の世界選手権まで続けてほしい」と話しているといい、日本代表の城田監督も「ほかの選手との差は明らか。本人次第だけど、このままでも十分できる」と評価。「滑りたい気持ちがある限りアマ、プロにこだわりはない。帰国してから少しずつ考えたい」と話す荒川は、時間をかけて決断する。

 テレビ界も黙ってはいない? 荒川がテレビ朝日系人気アニメのドラえもんに「静香ちゃん」つながりで出演する可能性が出てきた。昨年のGPファイナルを放送してフィギュア中継に力を入れているテレビ朝日は、会社の五輪ピンバッジにドラえもんを採用。少女時代からドラえもんファンの荒川も喜んで胸に付けている。それを見た同テレビ局関係者は、アニメになって登場する企画を「考えてみます」と話した。

 金メダル獲得で注目の荒川が同じ名前の静香ちゃんと共演すれば、のび太君もビックリだ。テレビ朝日のもう1つの人気アニメ「クレヨンしんちゃん」には昨年末、同じ五輪代表の女子モーグルの上村愛子とハーフパイプの今井メロが出演している。

※記録と表記は当時のもの