羽生の五輪連覇へ強敵が現れた。SP3位の羽生結弦(22=ANA)は、自身初となる4度の4回転ジャンプを成功させてフリーは206・67点の首位も、合計303・71点で2位。5度の4回転を着氷させた米国のネーサン・チェンに届かなかった。4回転ループを初成功させた3位の宇野昌磨(19=中京大)を含め、国際スケート連盟(ISU)公認大会で上位3人がフリー4回転ジャンプ4本以上を跳ぶのは初めて。18年平昌五輪に向け「4回転時代」は新たな次元に突入した。

 羽生は、穏やかに笑っていた。「3度目の銀メダルだけど、一番楽しかった」。今季自己最高の206・67点で合計303・71をたたき出しながら勝者にはなれなかった。ISU公認大会では史上初めて上位2人が合計300点を出すハイレベルの戦い。「正直勝ちたかった」という悔しさと同時に、真っ向勝負で敗れた爽やかさがあった。ライバルのチェンを「尊敬に値する。正直におめでとうと言いたい」とたたえた。

 チェンの「怖さ」を感じて臨んだことが、フリーでの4回転4本成功につながった。最初の4回転2本を美しく決めるも、4回転サルコーからの連続ジャンプを失敗。勝つために「4本跳ぶことが最重要」と急きょプログラムを変更して、練習でも試していない4回転トーループの連続技を加えた。攻めの姿勢で逆転の首位に立ち、思わずガッツポーズも、その直後、史上初めて5度の4回転を着氷したチェンに抜かれて、悲哀を味わった。

 ソチ五輪前から争うチャン(カナダ)、同門のフェルナンデス(スペイン)以外に敗れるのは中国杯での衝突事故明けだった14年NHK杯以来。それでも頂点を逃し、自分より若いライバルが出現したことは喜びでもあった。「僕には追うべきものがたくさんあって、もっとレベルアップできるんだって感じられる試合だった」と声を弾ませた。

 連覇を狙う平昌五輪会場で、競技時間とほぼ同じ時間に、トップの選手と競い合い「自信になった」。準備や時間の使い方など体に染みこませた。難しい技に挑み、自分の限界に挑戦している楽しさを感じられる大会だった。まだSP、フリーともにできていない完成形を見せれば「勝てる」と確信する。手応えを、今季最終戦、世界選手権へとつなげる。【高場泉穂】