女子52キロ級で16歳の阿部詩(兵庫・夙川学院高1年)が初優勝した。得意の内股がさえ、4試合で一本勝ち3度の快勝。国際柔道連盟(IJF)によると、GPなどを含む主催国際大会「ワールドツアー」の史上最年少制覇を遂げた。男子66キロ級の阿部一二三(19=日体大)と兄妹での東京五輪出場を狙うホープが一気に頂点に駆け上がった。

 阿部が海外でのシニア大会初出場で優勝という鮮烈なデビューを果たした。「勝つ自信はあったけど、優勝できるとはあまり思っていなかった。驚きもありつつ、うれしさがある」。目を丸くし、少しはにかみながら快挙を喜んだ。

 連覇を狙った志々目との準々決勝を含めて、初戦から3試合は豪快に投げて一本勝ち。決勝は14年世界選手権48キロ級銅メダルのフランス選手と対戦した。一昨年の合宿で組んだ時に「ぼこぼこにされた」という難敵で、得意の内股で技ありを奪い優勢勝ちした。畳の上では表情を変えなかったが、心中では「勝っちゃった。優勝している」と思わず叫んだという。1年前から筋力トレーニングで上半身を強化。今大会は有効廃止などの新ルールも適用されたが「自分の成長を感じた」と満足げに話した。日本代表女子の増地監督も「高校1年でシニアの大会で結果を残すのは楽しみな選手」と称賛した。

 女子52キロ級は五輪3大会連続で頂点を逃した。リオ五輪3位の中村美里が休養中だけに阿部の急成長は頼もしい。目標は12日に終了したグランドスラム・パリ大会で優勝した尊敬する兄一二三と東京五輪に出場すること。「トップに立ち続けて、そのまま五輪に出たい」と決意を新たにした。

 ◆阿部詩(あべ・うた)2000年(平12)7月14日生まれ、神戸市出身。5歳で柔道を始め、兵庫・夙川学院中で15年に全国中学校体育大会優勝。昨年11月の講道館杯全日本体重別選手権で3位に入り、12月のグランドスラム東京大会は準優勝。得意技は内股、袖釣り込み腰。158センチ。