昨年9月のカヌーのスプリント日本選手権で小松正治選手(25=愛媛県協会)の飲み物に禁止薬物を混入させた鈴木康大選手(32=福島県協会)が、昨年6月に小松選手の現金とパスポートを隠したほか、所属先に中傷する内容のメールを送るなどの嫌がらせ行為を繰り返していたと関係者に話していることが11日分かった。ライバルへの妨害行為が多岐にわたっていたことが明らかになった。

 鈴木選手はいずれも認め、小松選手に手紙で謝罪している。日本カヌー連盟の古谷利彦専務理事は「事実は把握しているが、警察に委ねている問題なので公表できなかった」と説明した。

 関係者によると、五輪出場経験のない鈴木選手は昨年、若手有望株の小松選手に勝てなくなり、五輪出場が有望なカヤックフォア(4人乗り)の日本代表メンバーからも外れた。目標だった2020年東京五輪へ不安を感じ、嫌がらせを行うようになった。

 昨年6月に石川県小松市で行われた代表合宿中に「困らせようと考えた」と更衣室で現金2万円とパスポートを隠したことをきっかけに、行為はエスカレート。小松選手にドーピングで陽性反応が出れば自分が代表になれる可能性があると考え、9月11日の日本選手権では小松選手の予選レース中に飲料に禁止物質を混入させただけでなく、決勝レース後にはパドルとスピードメーターを盗んだ。

 スピードメーターは会場のごみ箱に捨て、パドルは車に隠したという。パスポートがなくなった小松選手は7月の海外遠征への出発が遅れた。

 9、10月には小松選手の所属先に計4回、中傷メールを送った。プライベートな内容も書かれていたという。

 飲料に禁止物質が混入したと知らずに飲んだ小松選手はドーピング検査で陽性となり、一時は日本アンチ・ドーピング機構(JADA)に資格を停止されたが、鈴木選手が不正を認め、処分は解除された。鈴木選手はJADAから8年間の資格停止処分を科された。