早田ひな(18=日本生命)が「金星」を挙げ、ベスト8に進出した。4度の優勝経験がある石川佳純(全農)に4-1で勝利。ダブルスは強い一方、シングルスに課題を残しており、20年東京五輪の選考へ意味ある1勝となった。石川がベスト8に進めなかったのは06年大会以来13大会ぶり。昨年準Vの平野美宇(日本生命)も5回戦で敗れ、波乱が続いた。男子シングルスは昨年王者の張本智和(エリートアカデミー)が8強に駒を進めた。

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未完の大器がついに頭角を現した。早田は世界ランク3位の格上をバックハンドで威圧。第5ゲームでは相手に5得点しか許さず、最後は4連続得点で痛快に勝利を決めた。立て続けに速い球で押し続ける中、時折緩い球で石川のミスを誘うなど、緩急で完全にゲームを支配。「昨年負けた時とは違い、絶対に自分のプレーを貫こうと思った」と覚悟を決めて戦った。

左ハンドで石川同様、正統派の攻撃型。しかも167センチと上背もあり、卓球界の期待は大きかった。関係者は口をそろえ「ダブルスのようにシングルスも良ければ…」と、その開花を待っていた。そのダブルスが時を経て、早田を好転させた。約2年前から伊藤美誠と組み、世界トップの卓球を間近で見た。「勝負どころを学ばせてもらった。それがシングルスに生きている」。

Tリーグの経験も生きた。約5000人の観衆を集めた昨年10月の開幕戦。大勢の中で戦うメンタルを得て、声援を受けることへの感謝の心も芽生えた。この日も3000人超の前でトップ選手を相手にしても、臆することはなかった。

現在、世界ランク43位と、東京五輪選考には遠い位置にいる。それでも「挑戦できると思っている。最後まで諦めない」と下克上を誓った。【三須一紀】

 

○…石川は「(早田に)7ゲーム制の試合で負けた記憶がない」と少し涙を浮かべた。「ひなちゃんのバックに押されて自分の思っているバックのスピードが出なかった」と肩を落とした。8強に進めず「ベスト16? ずっとエイトには入っていたので、残念ですね。でも良い勉強になりました」と語った。