アテネ五輪平泳ぎ2冠の北島康介(25=日本コカ・コーラ)が「カジキ水着」で、2大会連続五輪2冠に挑む。契約するミズノが9日、都内で最新水着を発表した。魚類最速のカジキの体表面を分析し、摩擦抵抗を従来の同社製比で約8%軽減に成功。この水着を着て練習を公開した北島は「水着が体を押してくれる」と絶賛。今年、世界新記録を連発しているスピード社の最新水着を着用した選手たちに、対抗心を燃やした。

 地球上でもっとも速いカジキの力が、北島を後押しする。開発段階から試作品を着ては助言してきた北島は、ひざ丈のハーフスパッツ型の最新水着をはいて練習を公開。「今までにない感覚で衝撃を受けた。水着が体を押してくれる感じ。ミズノの水着も世界に通用することを、僕が証明できたらいい。記録を狙うのが楽しみ」と絶賛。今年発表されたスピード社の最新水着を着用して世界新を連発しているライバルへ、対抗心をのぞかせた。

 水着は時速100キロ以上で泳ぐ最速魚カジキの体表面を研究して制作された。従来の水をはじく技術と同時に、水を染み込んでなじませる正反対の要素も盛り込んだ。生地には世界初のジェル加工が施され、「ヌルヌルしたような感じ」(開発担当者)と、魚類特有の肌触りまで再現。スピード社が体の締め付けを強化し、選手の姿勢を保たせることに力を注いだのに対し、ミズノは素材による抵抗の削減にこだわった。

 日本代表選手は日本水連の契約の関係でミズノ、アシックス、デサントの3社の製品しか着ることはできない。世界新を連発しているスピード社製を着られないことに、疑問の声も上がった。だが北島はまるで意に介していない。「世界新が出れば刺激になる」と逆に闘志をかきたてた。

 カジキ水着での最初のレースは、五輪代表選考会の日本選手権(15日開幕)。ぶっつけ本番になるが「この水着を着たら自分は強いんだという安心感を持てる。体の仕上がりは、あと1週間何もなければパーフェクト。絶好調です」。03年以来5年ぶりの世界新に挑む。【高田文太】