<陸上:日本選手権50キロ競歩>◇13日◇石川・輪島市

 競歩のエース山崎勇喜(24=長谷川体育施設)が日本新記録を樹立し、大会5連覇を達成した。26キロすぎにスパートし、3時間41分55秒でゴール。自己の記録を1分43秒更新した。1月に20キロ競歩も制しており、五輪代表が確実。係員の誘導ミスで途中棄権となり注目された大阪世界選手権から約7カ月。女子マラソンの浅利純子らを育てた鈴木従道監督(62)の下、北京五輪でのメダル取りが視野に入ってきた。同代表は6月30日に発表される。

 ゴールの瞬間にもまだ、躍動感があった。山崎が、2年ぶりの日本新でV5を飾った。序盤は自重し、谷井とのマッチレース。「まだ自分の力に自信がなく、最初から行けなかった」と振り返ったが、27キロ付近からスパート。その後は1人旅で、50キロをねじ伏せた。

 「今までは、足が棒になって、やっとたどり着く感じ。今回はペースがそんなに落ちずにできた。力が付いている証拠だし、自信になりました」。07年世界選手権は誘導ミスが注目された一方、世界トップとの差を痛感した大会でもあった。あれから、体も心も生まれ変わった。

 栃木の山を上り下りする練習を取り入れた。同じ練習でも、世界選手権前よりペースが速くなった。「一流のアスリートになるためには、一流の人間になれ」と鈴木監督から説かれた。バスに乗車中、携帯電話が鳴った時には、マナー違反だとして鉄拳制裁を食らったこともあった。

 鈴木監督は「競歩だけなら、素晴らしい集中力がある。競歩界の山下清。それだけは、異常な天才だ」と評価する。「アテネは出るだけで舞い上がっていた。今は勝負したい。自分の中で変化がありますね」と山崎。目の色が、確実に変わってきた。【佐々木一郎】