<テニス:全米オープン>◇8月30日(日本時間同31日)◇男子シングルス3回戦ほか◇ニューヨーク、ナショナル・テニスセンター

 世界126位の錦織圭(18=ソニー)が「世紀の大金星」を挙げた。3回戦で昨年の4強で同4位ダビド・フェレール(26=スペイン)を撃破。3時間32分に及ぶ死闘をフルセットで制した。日本男子の全米16強入りは71年ぶり。4大大会でのトップ4シード撃破も佐藤次郎以来75年ぶり2人目の快挙だった。さらに全米では73年のボルグ以来の年少トップ4シード撃破。錦織は4回戦で同17位のデルポトロ(19=アルゼンチン)と対戦する。

 無我夢中で走り、全身全霊で打ち合った。212分の死闘。5セットを戦うのは、テニス人生で2度目だ。第3セットから初戦同様、両足をけいれんが襲った。ガッツポーズを連発して心を奮い立たせた。ウエアを汗まみれにして迎えた3度目のマッチポイント。

 「最後は手が震えた。どうしても勝ちたかった」。

 得意のフォアに、浮いた球が来た。思い切り逆クロスにたたき込んだ。世界4位のフェレールをねじ伏せた。コートに倒れ込み、天を仰いだ。

 「信じられない。これまでで最高の勝利」。日本男子として、71年ぶりの全米16強。その才能は日本のレベルを超えていた。3回戦に残った選手で最年少。しかも、あのボルグが17歳にして第3シードのアッシュを破った快挙に続く、18歳で全米トップ4シードを撃破した。

 最初の2セットは、豪快なフォアにサーブ&ボレーを織り交ぜ、変幻自在のショットでほんろうした。疲れがたまった終盤は「第5セットにかけるため、第4セットは半分捨てた」という。18歳らしからぬ冷静さも見せた。

 珍しく注意事項を書き込んだノートをコートに持ち込んだ。両親も見たことがないポール・スミス社製のノートを第5セット前にベンチで熟読した。「落ち着けとか書いてあるだけ。それ以上は言えません」。英文で書かれたアドバイスで、疲労とけいれんから立ち直った。「今までなら投げ出したかも。最後まであきらめなかった」。最終セット5-2から5オールに追いつかれたが、突き放す力強さで締めくくった。

 人としても一回り大きくなった。これまで家族が来ても、集中するため、行動は別だった。しかし、今大会は初めて同じホテルに泊まり、試合以外は行動を共にしている。父清志さんは「ほかのことに惑わされないという自信がついてきたのでしょう」と目を細めた。

 4回戦は今季4勝の19歳、デルポトロだ。将来を期待をされている新星の1人。13歳の時の対戦で負けているが、今回は「いけると思う」と頼もしい。世界99位の自己最高位の更新は濃厚だ。日本選手未到の4大大会シングルス決勝まであと3勝。錦織が未知の歴史を開く時が、もう迫っている。