【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)23日=高田文太】フィギュアスケートの世界女王浅田真央(18=中京大中京高)が、「イチロー流」でWBC日本代表に続く2大会連続世界一に挑む。この日は、24日(日本時間25日)に開幕する世界選手権の舞台ロサンゼルス入りし、公式練習でショートプログラム(SP)の演技を披露。3年前にテレビ番組で共演した際のイチローの言葉通り、重圧を楽しむ余裕を見せた。練習後はWBCをテレビ観戦、イチローの活躍に再び刺激を受けて力に変えていた。

 浅田はテレビにくぎ付けになっていた。練習を終えて宿舎に戻った時、WBC決勝はすでに9回。部屋に戻る時間も惜しんで、ホテル内の出入り口に近いバーにあるテレビを食い入るように見た。バーの席にはつかなかったが、優勝の瞬間を見逃すまいと、立ち尽くしたまま応援した。土壇場で同点とされ、延長に突入。そしてイチローの決勝打に「やっぱりイチローさんが活躍したね!」と、歓喜の声を上げた。

 そこに練習から戻ってきた小塚崇彦(20=トヨタ自動車)ら男子選手も合流した。最後は15人もの日本代表関係者が立ったまま観戦する「街頭テレビ状態」で、サムライジャパンの快挙を祝った。一行が解散したのは午後11時前。この日、日本から空路で現地入りした浅田にとっては、30時間以上も昼間が続き、眠気がピークとなる時間帯だったが、元気いっぱいだ。

 疲労を吹き飛ばしたのは「あこがれ」というイチローの活躍だ。3年前にテレビ番組で共演。浅田が「また会って話したい」というと、前回のWBC開幕直前だったイチローも「何をおいても来ますよ。WBCをキャンセルしても」と応じてくれるほど、意気投合した。その際、イチローがプレッシャーについて「苦しいものだが、気持ち良くもある」と話したことが、強烈に胸に残っている。

 この日、公式練習の会場には関係者だけで500人もの「ギャラリー」が集まった。最大のライバルで韓国代表の金妍児の視線もあった。その中で、今季1度も成功がない2連続3回転ジャンプを決めた。「練習からお客さんがたくさんいて少し緊張したけど、いい練習になった」。

 イチローの教えを実践し、連覇の期待がかかる重圧を楽しむかのように、笑った。続けて「(WBCに)パワーをもらえたので自分も頑張りたい」と言葉に力を込めた。同じロサンゼルスを舞台に、今度は銀盤の女王が連覇に挑む。