<W杯射撃>◇27日◇オーストラリア・シドニー

 射撃のW杯シドニー大会は27日、シドニーで行われ、男子50メートルピストルでロンドン五輪代表の松田知幸(35=神奈川県警)が664・0点で快勝し、24日のエアピストルとの2冠に輝いた。W杯では08年ミュンヘン大会50メートルピストルと合わせ3勝目を挙げた。昨年の世界選手権でもこの2種目を制した松田は、予選を2番手に1点差の567点でトップ通過。決勝でも安定した射撃を続けて2位に4・2点差をつけ北京五輪エアピストル覇者の■偉(中国)らを抑えた。

 松田は同じ警官が被災地に派遣される中、職場の理解があってW杯に出場した。射撃は心の微妙な動きが成績を左右する。「プレッシャーはあったが、それ以上にやらなくちゃという責任感が生まれた」という。

 宮城県石巻市の全日本選手権会場で大震災に遭った。難を逃れて翌日、初めてテレビで惨状を目にした。「怖かった。家族の心配もあった」とW杯辞退を考えたが、上司から「こんな時だから日本の代表で行ってこい」と背中を押された。

 宮城県警の秋山輝吉は今回来られなかった。いろいろな心の揺れを封じ、五輪を目指す競技者として射場に立った。世界王者は「プレッシャーに勝たなければいけない。そう思いながらやった。少しでも何かの役に立てれば」と淡々と話した。※■はマダレに龍