<フィギュアスケート:全日本ジュニア選手権>◇最終日◇24日◇新潟アサヒアレックスアイスアリーナ

 「ジェット娘」が偉大な先輩に並んだ。女子フリーが行われ、ショートプログラム(SP)1位の樋口新葉(わかば、13=日本橋女学館中)が123・97点の1位とし、合計187・95点で初優勝を飾った。中学2年での勝利は、安藤美姫、浅田真央に並ぶ快挙。18年平昌五輪へ、圧倒的なスピードを武器にする新星が登場した。男子は宇野昌磨(16)が初優勝した。

 樋口がぐんぐんとリンクの上を加速していく。見守った日本連盟の小林強化部長は、思わずつぶやいた。「スケート靴にジェット噴射が付いてるみたい…」。

 「スピードを出しなさい」と言われたことは、ない。感覚をつかむためのジャンプの基礎練習で言われるのは「スピードを抑えて」。岡島コーチはその源を「身のこなしが天性のものだから」と話す。速さには重心移動が肝になるが、それが備わっていた。

 さらに、子供ならスピードを出すことに恐怖心があるが、樋口は「怖いと思ったことはない」という。肝っ玉も据わる13歳。3月の世界選手権のエキシビション出演時には、途中で曲が止まるハプニングにも動じず、1万人を超える観客の前で4回転ジャンプにも挑んだ。しっかり者で自己主張できる性格は、時に「きつい」とも言われるが、一流アスリートの条件の1つ。

 この日の6分間練習でも、岡島コーチからのジャンプの指示に「さっきやりました」と自分のペースを貫いた。そして本番。スピードが出れば難しくなるジャンプも、最初の3回転ルッツ-3回転トーループを弾丸のように跳ぶと、最後まで速度は落ちず。「やりきった感じがあった」と左手を力強く振り下ろした。

 21世紀が始まる01年1月2日に生まれたから、名前に「新」という漢字が入った。安藤、浅田ら、一流選手と同じ、中2での頂点。18年平昌五輪へ、フィギュア界の新世紀を築く素質は十分だ。【阿部健吾】

 ◆樋口新葉(ひぐち・わかば)2001年(平13)1月2日、東京都生まれ。3歳の時に競技を始める。4歳で明治神宮外苑スケート場に移り、岡島功治コーチに師事。13年全日本ノービス優勝。今季はジュニアGPシリーズのチェコ大会2位、ドイツ大会優勝で、来月のジュニアGPファイナルに進出している。特技はなわとび。好きな食べ物はハンバーグ。148センチ。