<柔道:世界選手権>◇11日◇女子63キロ級◇東京・代々木第1体育館

 日本人同士の決勝となった女子63キロ級は、上野順恵(27=三井住友海上)が田中美衣(22)を判定で下し、2連覇を達成した。

 上野が重圧を乗り越えて連覇を達成した。知らない間に体がプレッシャーに襲われた。準決勝後に脱水症状で手首の震えが止まらなくなった。それでも臨んだ田中との女子史上初の日本人決勝対決。延長戦までもつれ込んだが、判定勝ちした。「みんなにマークされていた。苦しかった。でも気持ちですね」。地元開催、絶対的本命という重荷を下ろして表情が和らいだ。

 連覇をささげたい人がいた。旭川南高時代の監督、中野政美さんの母キクさんだ。1週間前の4日、肝臓がんで93歳で亡くなった。上野が選抜体重別選手権で勝ちながら五輪代表に落選した時は「勝ったのにどうしてそうなるんだ」とわが事のように憤ってくれた。中野さんは「順恵は母のために『とにかく頑張ります。絶対に勝ちます』と電話をくれた」と明かした。

 今大会は姉、妹のサポートがあった。引退した五輪連覇の姉雅恵さんは、昨年、専門学校に通い始めたため帯同できなかったが、今回は練習会場から付き添ってくれた。上野は「妹(巴恵)は練習相手になってくれた。姉は見てるだけ(笑い)。でも『意地でも勝て』と言ってくれた。心強かった」。姉は世界選手権でも連覇しており、姉妹連覇は史上初の快挙。姉妹のきずなでロンドン五輪へまた前進した。【広重竜太郎】