<大相撲秋場所>◇11日目◇23日◇東京・両国国技館

 2敗同士の巨人対決は、198センチの小結把瑠都(24=尾上)が、203センチの大関琴欧洲(26=佐渡ケ嶽)をはたき込み、優勝戦線に踏みとどまった。今年初場所に続く年間2度の4大関撃破は、1986年(昭61)の小錦に続き史上2人目。12日の大関琴光喜(33)戦で全5大関撃破の角界タイ記録に挑む。

 角界の巨人対決は把瑠都が制した。2敗同士の長身対決に、館内から拍手がわき起こった。「メチャメチャ緊張して、しこ、踏めなかった」。だが、身長で5センチ上回る琴欧洲に立ち合いから圧力をかけると、「最後、塩、取りに行った時に決めた」というはたき込み。唯一、自分よりも大きな相手をねじ伏せて「(自分も)背高いから、向こうもガップリになりたくないから」と笑顔で話した。

 今場所は日馬富士、千代大海、魁皇に続いて4大関を撃破。自身にとっては今年初場所以来となる2度目の快進撃。12日目に琴光喜を破れば、関脇以下としては86年の保志(八角親方)以来2人目の5大関総なめとなるが「あ~、それは別に狙ってないよ」と意に介していない。

 これまでは怪力だけに頼っていたが、11勝を挙げた先場所から本当の「相撲」が取れるようになった。以前は母国エストニアで柔道をやっていたため「相手を引っぱり込もうとしていた」。だが師匠の尾上親方(元小結浜ノ嶋)の「まわしは下から取りに行け」という指導で、下から絞って前に出る相撲を体得しつつある。場所前には「すり足、いっぱいやった」と話していた。武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)も「突き放すことを覚えたのも大きいね」と成長を評した。

 私生活での充実も大きい。今年2月にエレナ夫人(26)と結婚。場所中は毎晩、手料理をつくってもらい「もちろん何でもおいしい」とのろける。また「明るくなったら目が覚めるから早く寝る」と、午前0時をすぎて就寝することもほとんどない。

 実力的には大関以上の呼び声が高いが「周りの人からは言われるけど、一切考えてないよ」。無敗の横綱朝青龍まで2差。「何も考えてない。自分にプレッシャーかけたくないから」。あどけない笑顔のエストニアの怪人が、終盤戦を盛り上げる。【山田大介】