<大相撲秋場所>◇14日目◇26日◇東京・両国国技館

 横綱朝青龍(29=高砂)が、4場所ぶり24度目の優勝に王手をかけた。大関琴光喜(33)を下手投げで破って14戦全勝だ。横綱白鵬(24=宮城野)も大関琴欧洲(26)を下して1敗をキープ。賜杯の行方は両横綱に絞られ、朝青龍は29歳の誕生日と重なる千秋楽に一発勝負で賜杯をつかみにいく。

 朝青龍の勢いが止まらない。琴光喜が得意の右四つで胸を合わせながら、つかんだ左前みつを引き付け、相手の上体を起こしてからの下手投げ。鼻をふくらませ、土俵下で見つめる白鵬を尻目に、33本の懸賞をわしづかみにした。「まあ、相手も出てきたところだったからね。流れでね」。

 北の湖と並ぶ歴代3位の24度目の優勝へM1。1敗の白鵬に本割で勝てば、6度目の全勝Vという名誉もつく。双葉山、大鵬の8度、北の湖、千代の富士の7度に続く大記録。記録大好きの朝青龍がこれを意識しないはずはない。「本割で決めたいか?」の問いに、「意識しない」と言いつつも「一番にはそういうのはある」と本音も口にした。

 だが、仮に本割で負けても決定戦は是が非でも制したい。27日は29歳の誕生日。報道陣には「何で(誕生日って)知ってるんだ。どうでもいい」と毒づいたが、前夜は友人に電話をかけて「オレはこのまま(優勝まで)行く。誕生日だって知ってるよな」とご機嫌に話していた。

 もう1つの優勝したい理由は、29日で40歳になる付け人の三段目輝面龍(39)への恩返しだ。年上の関係者も呼び捨てにする横綱だが、批判され、落ち込むたびに励ましてくれたこの兄弟子だけは「日比さん(輝面龍の本名)」と呼ぶ。場所前も「場所で頑張ってお互いにいい誕生日にしようよ」と話していたという。輝面龍も「今場所の横綱は落ち着いていて、いい集中が続いている。(白鵬に)勝ってほしい」と期待を込める。自分のため、兄弟子のために。29歳でもやんちゃな横綱が、賜杯という最高の誕生プレゼントをつかみとる。【柳田通斉】