<大相撲春場所>◇千秋楽◇24日◇大阪・ボディメーカーコロシアム

 横綱白鵬(28=宮城野)が、9回目の全勝優勝を決めた。双葉山、大鵬の8回を抜き歴代1位。結びの一番で横綱日馬富士(28)を上手投げで破り、強さを誇示した。表彰式では「角界の父」と慕う大鵬さんへの黙とうを館内の観客とともにささげ、涙を流した。

 白鵬が最高の報告を天国へ告げた。賜杯を北の湖理事長から受け取ると「大鵬さんに優勝をささげたいと思います。みなさん黙とうをお願いします」。会場が1つになった。前例のない沈黙の1分間。「先場所にできなかったので、すばらしい形で優勝できて、その報告ができました。最高です」。開いた両目からは涙があふれ出た。青いタオルでぬぐった。

 紗代子夫人は「横綱は先場所優勝してささげたかったと言っていました。私の前では悔しさをあまり出さないので珍しかった」。思いの強さは春場所前の稽古に直結した。連日の出稽古に加え、5日には日馬富士と横綱同士のぶつかり稽古で気持ちも高めた。オーバーワークだったのかもしれない。11日目には耳が腫れ発熱。点滴を受けながら電話で夫人へ弱音を吐いた。心配した夫人はモンゴル料理を急いで届けるほど心配した。それでも気持ちの充実は著しく13日目の優勝決定。全勝もつかんだ。支度部屋に戻り、2歳の次女美羽紗ちゃんから「パパやったね」と頭をなでられるとようやく表情は緩んだ。

 東の横綱の座を日馬富士に実力で示した激闘だった。左の半身になった苦しい体勢。左手1本の下手投げは残されたが、すぐさま巻き替え、自分十分の右四つ。勝利を楽しむかのようにジワジワと土俵際に追いつめると、左からの上手投げで相手を裏返した。「やっぱり全勝は特別なものがありますからね」と喜びをかみしめた。

 大鵬、双葉山を超える、10年秋場所以来9回目の全勝。「もうできないかと思っていたこともあった。やっぱり両横綱に憧れ、愛していますから光栄であります」と言った。次の目標を問われると「朝青龍関の優勝25回に並びたいという謙虚な気持ちでいきます」。夏場所優勝へ。大鵬さんが大好きだった両国の地で、11年秋場所以来約2年ぶりの「江戸優勝」も確実かと思わせるほど、強い春だった。【鎌田直秀】