角界初のアフリカ出身関取が誕生した。エジプト出身の大砂嵐(21=大嶽)が十両に昇進することが、29日に行われた名古屋場所(7月7日初日、愛知県体育館)の番付編成会議で決定。所要8場所での新十両は外国出身としては歴代最速タイ。青狼(せいろう、24)琴弥山(ことみせん、29)遠藤(22)の新十両、芳東(36)の再十両昇進も発表された。

 髪の長さも日本語も、そして相撲の強さもまだまだ成長中。エジプト出身の大砂嵐が、関取としての出発地点に立った。「親方ありがとうございます。毎日厳しい稽古頑張ります。横綱になります」。感謝の言葉で決意表明した。

 運命的だった。この日は1月に死去した大鵬さんの誕生日でもあった。大嶽親方(元十両大竜)からは「オヤジの誕生日に、大砂嵐の昇進決定。導いてくれたんだぞ」と激励を受けた。大鵬さんからは1日四股500回、てっぽう1000回を課されていた。「今はまだ300回くらいしかできない。突っ張って、腰を下ろしてが自分の相撲スタイル。強い心も鍛えます」。「大鵬道場」の教えが、しっかりと宿っている。

 期待は高まるばかり。大嶽親方から、現役時代に使用していた羽織のひもが託された。呼び出しの吾郎から、稽古で使用する白まわし。大阪大竜後援会からは化粧まわしが贈られる。デザインは相撲絵師琴剣さんが描く、ピラミッドの前で相撲を取る大砂嵐の姿だ。

 夜には大鵬さん誕生日会が開催。仏前に手を合わせた。「大砂嵐昇進パーティー」も兼ねた。幕下優勝祝いとして、大鵬さんデザインのカップセットを贈ってくれた芳子夫人からは「最高の誕生日プレゼントです」と涙で感謝された。

 大砂嵐のしこ名。「砂嵐」はピラミッドから700メートルの実家で考えたもの。「大」は、大嶽部屋、大嶽親方、大鵬さんから受け継いだ。アフリカから横綱を目指して来日した21歳は、大きな期待を負っている。名古屋場所3日目からはイスラム信仰の断食「ラマダン」も始まる。「どんなつらいことも大丈夫。相撲が好きだから。強くなる。心も、相撲も。よろしくお願いいたします」。一番好きな日本語で締めた。【鎌田直秀】

 ◆大砂嵐金太郎(おおすなあらし・きんたろう)本名・アブデルラフマン・シャーラン。1992年2月10日、エジプト生まれ。16歳から相撲を始め、08年世界ジュニア選手権無差別級3位。11年同大会重量級3位。同年9月来日。12年春場所初土俵。同夏場所で序ノ口優勝。13年夏場所幕下優勝。得意は、突き、押し投げ。家族は両親と弟。189センチ、142キロ。