<大相撲初場所>◇14日目◇25日◇東京・両国国技館

 大関鶴竜(28=井筒)は大関稀勢の里(27)をはたき込みで破り、13連勝で1敗を守った。千秋楽結びの一番で初優勝を懸け、全勝の横綱白鵬(28)に挑む。初優勝には本割と優勝決定戦での連勝が必要。大関昇進を決めた12年春場所の決定戦で白鵬に負けた雪辱を期す。

 鶴竜が13個の白星を連ねた。6連敗中で過去9勝24敗と苦手な稀勢の里を得意技で仕留めた。立ち合いから低く鋭く頭から当たると、しっかりと踏み込んだ突き押し。タイミング良く頭を両手で押さえてはたき込み。右足親指を負傷する相手を土俵上で転がした。

 「とにかく左四つにだけはならないように。後は流れ。踏み込めたのが良かった」。今場所5度目のはたき込み。連勝も引き技の多さに不満の声も多い。本人も理想は前に出る相撲と分かっている。だが小柄だった頃の決め技の1つ。さらに磨くために「弟子入り」したのが日馬富士だった。

 横綱のもとに通い続けた。昨年6月、大阪・堺での伊勢ケ浜部屋合宿にも泊まり込みで出向き継続的な徹底指導を受けてきた。助言のポイントは1つ。立ち合い後すぐに引く癖を修正した。「鋭く当たったと同時に、後ろ足を半歩でも前に出すこと」とアドバイスを受けた。最初は上半身と下半身のバランスが悪く、腰が砕けるように後ろに転がった。てっぽうで筋力を増やし、腕を伸ばして相手との間合いを作ると自然と足も出るようになった。「積み重ねてきたことが確かな技術になってきた」。この日の一番も会心の一撃だった。

 場所前、休場を決断した日馬富士から「俺の分も頑張って」と連絡が来た。「横綱もそう。支えてくれる人のためにも結果を出したい」。初体験となる千秋楽結びの一番。12年春に決定戦で敗れてから11連敗の白鵬に借りを返す時が来た。

 すでに師匠の井筒親方(元関脇逆鉾)は優勝祝賀会で使用するタイを用意してくれた。「泣いても笑っても最後。力を出し切りたい」。14勝1敗なら春場所は綱とり場所に。優勝が大きな自信になり、恩返しになる。初優勝まで、あと白星2つ。【鎌田直秀】

 ◆北の湖理事長(元横綱)鶴竜はいい立ち合いで前に踏み込んで攻めた。相手を突いての引きで危なさはない。白鵬優位は変わらない。2番とか考えず、とりあえず一番で思い切っていくしかない。早く攻めること。14勝なら決定戦で負けても優勝同点は大きい。2桁を割っている場所も多く(来場所昇進条件は)厳しくなる。